Episode 2: ファンドを作るとき、誰が関わるのか?— ファンド組成のプロセスに沿って“登場人物”を解説

この記事は同タイトルのPodcastの文章化したものです。

前回のエピソードでは「ファンドとは何か?」という基本の話をしました。

今回はその続編として、ファンドを作るときに“どんな人たちが、どのタイミングで関わるのかを、実務の流れに沿ってまとめます。

ファンドの世界は、ただの役職一覧では全体像がつかみにくいため、そこで今回は、ファンドを立ち上げるプロセスに沿って、関係者がどの順番で登場するのかを紹介します。

最初に必要なのは「投資家」

ファンドを作りたいと思ったとき、最初に考えるべきは 投資家(LP) です。

  • 最初にコミットしてくれる投資家がどれだけいるか
  • その人たちがどれだけ信頼してくれているか
  • 最初のコミット額で GP の収益がほぼ決まる

フィーの構造上、最初のLPがファンドの生命線になります。

世の中では、”first-and-last” クロージングをするところもありますが、1年で集まれば良いスタート。逆に、2年経っても集まらない場合、外からは「苦戦しているファンド」と見られます。

次に行くべきは「税理士」

法律より先に“税務設計”が必要

ファンド組成で最初に相談すべき相手は、実は 税理士 です。しかも、ファンド税務やクロスボーダーに強い人。

理由は2つ。

クロスボーダー税務(PE問題)

海外投資家が日本に投資する場合、

  • 日本のビークルを使うのか
  • ケイマンやルクセンブルクを使うのか
  • 日本で判断していると PE(Permanent Establishment)認定されるのか

これらはすべて税務の議論です。

成功報酬(キャリー)の課税設計

  • キャピタルゲイン課税(20.42%)
  • 所得税課税(最大55%)

キャリーを受け取る時に上記のどちらになるかで、GP、そしてそれを受け取る個人の手取りが大きく変わります。これも税務設計の問題。

そのため、税務 → 法務 の順番が正しい流れです。

その後に「弁護士」

ストラクチャーを形にする人たち

税務設計が固まったら、次は弁護士。

  • 日本の弁護士
  • ケイマンの弁護士
  • ルクセンブルクの弁護士
  • 米国の弁護士

など、投資家の国籍やビークルによって必要な専門家が変わります。

そのため、投資家の納税義務国が複数にまたがる場合は、リードカウンセル(国際ネットワークを持つ弁護士)にアレンジしてもらうのが最も効率的。

「監査」

公正価値評価(Fair Value)をどう扱うか、がファンドの運営の生命線

ファンドが動き始めると、資産評価の議論が必ず出てきます。

  • デリバティブ評価
  • 未上場株式の公正価値評価
    • 2023–24年の投資事業有限責任組合法改正への対応

監査は、公正価値評価額を計算する Excel「モデル」を評価するのだけでなく、評価に使うデータとその取得経路や妥当性といったフェアネス まで確認します。そのため、これが誰かさんが使っているモデルだから大丈夫、なんて自分と異なる誰かに人生を預けるのではなく、監査法人は早めに関与させるのがベスト。

「ファンドアドミニストレーター」

運用チームを“本業に集中”させる存在

ファンドが走り始めると、事務作業が膨大になります。

  • キャピタルコール
  • 分配
  • 費用管理
  • 会計
  • 投資家へのレポーティング

これを運用チームが兼務するのは現実的ではありません。そこで登場するのが ファンドアドミニストレーター。

さらに、内部には ファンドコントローラー を置くことで、品質管理とガバナンスが整います。

「取締役」「コーポレートセクレタリー」

ガバナンスを支える人たち

海外ビークル(例:ケイマン)を使う場合、日本居住者が取締役になると PE リスクが高まります。そのため:

  • 外部取締役
  • コーポレートセクレタリー(議事録管理)

が必要になります。

運用開始後に関わる専門家たち

ファンドが動き出すと、さらに多くの専門家が登場します。

  • ヘッジファンドなら、証券会社・プライムブローカー
  • 未上場株式なら
    • M&A のファイナンシャルアドバイザー
    • トランザクションロイヤー
    • W&I保険
  • インベスターポータル
  • ポートフォリオ管理システム
  • 各種データベンダー

ファンド業界は、巨大なエコシステムで成り立っています。

若い人へのメッセージ

専修大学とのビジネスコンテスト

ちょっと本題から外れるのですが、今回、専修大学のゼミとビジネスコンテストを行いました。金融は難しく見えますが、実は多様なキャリアが存在します。

  • バイアウト、ベンチャーキャピタルといった戦略に合わせたポートフォリオ投資をする人
  • バックオフィス
  • 周辺サービス
  • ガバナンス
  • 法務・税務

気づけば、未上場だけでも年間7兆円規模の投資が行われていく巨大産業。若い人が入ってくることで、もっと面白くなる世界です。ということで、もっと若い人たちにこの業界への興味を持ってもらうための試みを始めました。

おわりに

今回は会いたい人に会うために、大阪に出張したことから、そのホテルから収録しました。

コメントをいただけると、とても励みになります。

Podcast / YouTube / Spotify

• YouTube

https://youtu.be/TODizR_Nrt8

• Spotify

https://open.spotify.com/episode/43UZRyQHIsEKn9j22wStEv?si=yJGgFRzvQZqNysko1GZkXA

• Apple Podcast

https://podcasts.apple.com/us/podcast/みやたしのぶ「な」投資小噺/id1865836720

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