この記事は同タイトルのPodcastの文章化したものです。
こんにちは、みやたしのぶです。
今回の Episode 5 では、これまでの「制度」や「器」の話から少し離れて、ファンドアドミニストレーター(ファンドアドミ)の仕事とは何かというテーマをお話しします。
きっかけは、2026年5月13日に開催されたDBS × アンダーソン・毛利・友常法律事務所 × Carey Olsenの共催イベントでのパネル登壇でした。
弁護士・会計士の専門家が並ぶ中、私はモデレーターとして議論を進めましたが、その中で改めて「自分が日々やっている仕事を、もっと丁寧に伝えたい」と感じました。
関連記事:Episode 3「ファンドの仕組みと投資家の視点」
関連記事:Episode 2「ファンドの運営とアドミの役割」
ファンドアドミの仕事は、投資の外側で静かに積み重ねられる実務の集合体です。
まずは、ファンドアドミの役割を下記のチャートにて全体像として整理します。

1. ファンドアドミとは何か
私はよく「事務屋です」と言いますが、ファンドアドミの仕事は、単なる事務作業ではありません。
ファンドの世界では、投資という“経済行為”が行われるたびに、お金が動き、記録が生まれ、報告が必要になる。その一連の流れを支えるのが、ファンドアドミの役割です。
2. 日々の経理処理と財務諸表
日々の取引がどのように財務諸表や投資家レポートにつながるのか。日々の取引が積み重なり、透明性のあるレポートが生まれます。
その全体像をまずは以下の図解で整理します。

ファンドが株式を買う、売る。
弁護士費用を払う。
監査費用が発生する。
こうした取引をすべて帳簿に記録し、四半期・半年・年次で 財務諸表 を作成します。
- バランスシート
- 損益計算書
- キャッシュフロー
- 投資家向けレポート
これらはすべて、日々の経理処理の積み重ねで作られます。
3. 投資家レポートと IR 対応
財務諸表ができたら終わりではありません。
投資家に対して、ファンドの状況を丁寧に説明する必要があります。
- 財務諸表
- 投資の状況
- 市場環境
- 今期の損益の背景
さらに、投資家からの質問に対して、IR チームと連携しながら回答を作成します。
レポート作成の背景はこちらの記事でも詳しく解説しています。
4. 監査対応と税務(FATCA / CRS)
ファンドは年に一度、監査を受けます。
- 公正価値評価(Fair Value)
- 請求書の裏付け
- 取引の妥当性
これらを含んだ監査法人による監査の作業も、アドミを軸として進めます。また、監査が終われば、税務当局への報告義務をファンドが負いますので、税務関連の反対調査のための資料をFATCAやCRSといった法制度に基づいて行なっていきます。
5. キャピタルコールと分配計算(PE 特有の実務)
キャピタルコールや分配は、ファンドアドミの仕事の中でも、GPによる判断と、資金の流れと、アドミの役割が複雑に絡みます。そのため、役割分担を特に誤解されやすい領域です。
以下の図で、資金の流れとアドミの役割を整理します。

プライベートエクイティでは、投資を行うたびに キャピタルコール(出資依頼) を行います。
- 投資家ごとの出資比率に応じた金額計算
- 通知書の作成
- 着金確認
- 投資先への送金
- 分配時の計算(キャリー計算含む)
金額を間違えるとファンドが成立しないため、極めて高い正確性が求められます。また、投資資産を売却した際にも投資家に対して資金を返還する一方で、成功報酬に相当するキャリーの配分といった複雑な計算をしながらそれぞれの投資家などに対して送金すべき資金額を確定させ、通知書を作成し、送金するという作業を行なっていきます。
キャピタルコールの詳細は、Episode 4 でも触れています。
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6. AML / KYC(本人確認・反社チェック)
ファンドにお金を入れる投資家が「誰なのか」「どこから来たお金なのか」を確認するのも重要な仕事です。
- 本人確認書類
- 会社の最終受益者(UBO)
- スクリーニング
- 国ごとのルールの違い
これらを専門チームで対応しています。
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7. 事務の価値とは何か
ファンドアドミの仕事は、ファンドにおいて、投資以外のすべてを支える“インフラ” です。

- 正確性
- スピード
- コミュニケーション
- システム投資
- 人材育成
これらが揃って初めて、運用者は投資に集中できる環境が整います。
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8. 若い人へのメッセージ
ファンド業界に興味がある若い人にとって、アドミの仕事は“地味”に見えるかもしれません。しかし、ファンドの裏側を深く理解できる、非常に面白い仕事でもあります。
ぜひ一緒にしませんか?
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関連リンク
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