よくある質問:GPコントローラーのアウトソーシングしてもらえませんか?
最近、ファンドを立ち上げたい、という、バイアウト、ベンチャー、そしてその中間のグロース問わず、未上場企業への投資チームを立ち上げたの投資のプロフェッショナルの方たちからのご相談をよく頂戴します。 Slowsteps のお仕事的には、お、これはお仕事になるぞ、と思うのですが、お話を聞いていると、よくこんなニーズを聞くことになるのです。それも一度ならずも二度三度。
「GPのコントローラーをアウトソース出来ませんか?だって、フルタイムで必要な仕事ではないじゃないですか。」

これでも一応、未上場企業の投資をする運用会社の COOをやっていた立場として、やっていた当時だってフルタイムだって時間が足りなかったよな、と思うのですが、そんな運用会社をはじめとして、どうも世の中の人というのは、他人がしている仕事への見積もりというのが過小評価になりがち、のようです。
まぁ、これはファンドの運営に限らず、夫婦生活をしていたって、夫は「俺は外で稼いできて、家事もしっかりやって、役割分担を果たしているぞ」と思っても、反対側の妻の立ち場から見ると「いやいや、あなた、何もしていないじゃない。」と思われていて、その逆に「妻よ、普段からゴロゴロして羨ましいのう」なんて言おうものなら「何言っているの、あなたのいない間に家のことを全部片付けて、あなたの食事だって準備して、何なら厄介で手のかかるあなたのご両親の面倒も見た上で、やっと落ち着いているのをなんてこというの!きっ!」なんて会話がどこの家庭でもされるのと、まぁ同じな訳です。
確かに、投資をする人たちからしてみれば、地道な投資先の発掘から投資をするまでの長い道のりを複数の企業に対してずっとこなしてきて、やっと譲渡に対して機関決定もするから株式を持ってもらってもいいよ、と言ってもらって譲渡契約を結ぶべく、投資委員会に向けて分厚い投資提案書を準備して、投資委員会での厳しい質疑応答もこなしてやっと株式取得の判断まで漕ぎ着けるのです。そりゃ、後の手続きとか投資家集めとかちゃんと黙ってやれよ、とか思っちゃいますよね。
しかもそんなに投資だってバイアウトやグロース、セカンダリーなら年に数件、ベンチャーだと二桁のオーダーでしょうけど、とはいえ、その契約締結から譲渡の決済までの資金の手当てから実行までのプロセスまで見ていられない、のも実際のところ。なので、「たまにしか」発生しないのだから、そこんとこよろしく、って言いたいのもわからなくはない、のです。
でも、社内においてその反対側の立場であったことを踏まえて、コントローラーは絶対にフルタイムであるべき、というところと、ついでに、コントローラーとアドミニストレーターの違い、そして、なぜアドミニストレーターを外部に出すべきなのか、まで、ちょっと突っ込んでみたいと思います。
GPコントローラーとファンドアドミの違いとは?
じゃあ、もしGPにコントローラーすら居なかったら(!)
まず、社内にコントローラーがいなかったら、どうなるでしょう。
端的にいえば、この投資でファンドを立ち上げて見ようか、と集まった3人のチームをイメージして貰えばいいと思います。ええ、その3人の誰かがメインで投資以外のパートを面倒を見る、ということです。
まず、先ほどの投資実行の続きで見てみましょう。
無事、3人で吟味してやろうと決めた投資の実行をしようとすると、まず、譲渡契約の締結が待っています。契約書の作成と場合によっては後出しされた条件だったり、契約条件を法律の世界の人たちのわかるような言葉にすると、あれ?おかしくない?みたいなことになった時に調整したり、さらには自分のファンドが取引相手に取って(AML/KYC的に)が怪しい会社じゃない(もっとわかりやすい日本語で言ったら、反社じゃなければ海の向こうのテロリストでもない)ことを証明する手続き(ということは、登記簿謄本に株主名簿、運転免許証の写し、などなどの作成するなんて細かいこと)もすることになります。
そうやってやっとこ出来上がった契約書を印刷して製本して(あ、製本って皆さんできます?ホチキスして、背表紙を綺麗に貼る、って結構技術が要りますよ。え?そんなものは秘書とか誰かがするんでしょ?ほら、自分たち3人しかいないんですよ!誰がするんです?)、そしてやっとお互いに捺印して、契約が成立しました。
でも、契約は同意事項でしかないから、この契約に基づいて売買代金を払い込むことになるのですが、未上場株式ファンドは投資家さんの事情(個人の投資家さんなど、出資約束をした瞬間に約束金額を全額払い込むようなこと)がなければ、売買代金だけでなく、取引にかかったDD費用、FAなど絡んでいればそういう人たちへの手数料に、その他の弁護士費用、当然、送金するのに銀行手数料がかかるので、そういった取引関係の全てに関わる資金の調達が必要です。それを人呼んで、「キャピタルコール」とか「ドローダウン」、なんて言います(しっかし、なんでこの世界は複数の表現が当たり前に存在するのでしょうね)。
当たり前のことを言っているようですが、このコール、通常、コールを掛けて10営業日後を送金期限にするのが割と万国共通。ということは、請求書等は比較的後(といっても、大体発行後30-45日程度)でもいいよ、と請求書に書いてくる関係者さんも多いですが、譲渡代金の送金は契約書に定められた期限に遅れたら大変なことになります。そのため、その日から逆算していつまでに投資家さんから資金を着金すればいいか、ということは、それに向けたコールの通知をいつまでにしなければいけないか。。。
ん?そうなると、投資委員会の決定はその前になるからその日にいくら払うかまず固めて、そこからコール通知を作って。。。って、全体の資金の流れを実は投資委員会の前に詰めなければいけないのです。
しかも、です。もしあなたのファンドが国内籍のファンドで、投資家さんが国内だけ、なので銀行口座も国内居住者向けの銀行口座であっても、コールの送金期限と譲渡契約の決済日を同日になんてするのは危険です。なぜって?みんながみんな、送金期限日の朝1番に着金をさせられるはずがない、のです。
ファンドでも個人でもいいから、一度不動産売買のクロージングをやってみるとこれがよくわかります。大抵の場合、不動産譲渡契約から所有権に関する登記情報の変更するにあたって必要な書類、下手に不動産を担保にお金を借りている売主だったら、担保の解除のための書類の銀行とのやりとりなどあるので、買主が資金をリリース出来るのが午前10時から11時、そこから、いつ届くかねぇ、今頃富士山の麓?とかいういつ終わるかわからないけど当たり障りのない、しょーもないツナギのトークを幾つも懐に持っていないと、クロージング会場になる銀行の会議室というどうしようもないくらい味気も面白味もへったくれもないような場所(しかし、あれって不思議ですよね。もっと他にもいい応接室があるのですが、不動産のクロージングの時って、なんであんなにつまらない部屋でしか銀行さんとか信用組合さんってあてがってくれないのでしょう。。。まぁ、大した手数料にもならないからですかね。)で、(目の前の不動産取引から発生する収益と手数料に頭がいっぱいの)いい大人が何人もいる状態で、気まずさが充填された静寂という気が狂いそうで耐えられなくなって、かかっても来ていない電話に出て部屋から逃げ出す人がどれだけいるというのでしょう。。。
まぁ、そこそこデカい案件なら誰かが気を回して、お昼も回ったのでお弁当でも食べながら。。。。なんてトークの腕自慢みたいな修羅場を不必要に演出しないと間がもたない、それくらい、今時の銀行送金は着金が読めない、のです。今や paypayにとって代わられた個人間の飲み代のやり取りの送金が瞬間に終わるのは飲み会で1億円も掛からないから、なのです。
という修羅場のないキャピタルコールの期限当日、全額揃ったところを見て、午後2時50分に送金を行う、って先方はなんとか同日中に着金を確認できるかもしれませんが、それってとある投資家さんが(これまた一般的な組合契約にあるように、期限を過ぎても5日以内に履行すれば不履行組合員にならないから、と、意図的にボケて)一日送金を間違えたりしたら、資金が足りずにその日に送金できないことになって、契約不履行。アウトですね。
さらにいえば、ケイマン籍ファンドで日本国外の銀行の円口座で資金を受けるなんていったら。。。以前書いたコルレスの悪魔に捕まって、その日のオンラインバンキングでは着金確認できていなかった送金が、翌営業日に「当日付での資金が入っていました」なんて連絡を受けることになるのです。
ということで、頭のいいふりをする人たちがよく引っかかる、理論値だけで送金のスケジュールを決めてはいけないのです。
しかも、キャピタルコールは投資のためだけではないです。組合契約書に従って、自分たちGPの生活を支える運用報酬を年に1−2回はしなければいけませんし、ちょっとしたコンプラ対応とかやろうものなら、ちょこちょこと請求書が飛んでくるので、それに対応しないと、弁護士という最強の債権回収人がやってくることになるのです。
これ、専属の担当者なしで本当に対応可能でしょうか?というか、案件やりながらやりたい?
あ。忘れてた。譲渡が終わったら、株主の名義書き換えの手続きとか株主間契約とか、ポスクロの作業も色々ありますよね。PMIだってやらないといけないし。となると、決済なんて長いプロセスの一つに過ぎないので、そんなに構ってられないですよね。。。
当然のことながら、サブスクリプション・ファイナンスなんてものを使ってIRRを引き上げる、とか格好のいいことを言おうものなら、キャッシュフロー管理がより肝になることから、さらに考慮すべき要素が複雑になるので。。。まぁ、頭とお金が回らないでしょうね。
と、お金の話をしましたが、それ以外にも、四半期なり半期なりに運用報告をしなければいけません。ファンドの財務情報はまとめなければいけないし、投資先のそれぞれについて定量的側面でも定性的側面でもまとめる必要がありますが、投資家向けのレポートを作るため、と言いつつも、実は自分たちが今、どういう状態なのかを把握して次のアクションを考える材料にすべきところです。よくあるんですよね。それぞれの状態は自分の手元や頭の中にあるから大丈夫、っていう人。ファンド・ビジネスはチームでやるんじゃないんでしたっけ?それとも個人事業主の集まり?
もしチームでやるという意識があるならば、情報管理と共有という観点でこの辺りは内部と外部の両方を踏まえた体制も作っていかなければならない、ともいえます。まぁ、最初はスプレッドシートでもいいんですよ。大事なのは情報を蓄積して、見える形で共有し続けること、ですから。
さて、レポートが出来たら、ファンド・ビジネスにとって大事なお客様であるLP投資家さんに、年次の投資家集会以外にも年に2回は直接説明しないと、出資を決めた時の恋に落ちてくれたあの感覚はあっという間に冷めてしまう(ええ、ファンド投資は恋愛です。騙すなら最後まで騙し続けましょう!)ので、次のファンドに来ないかもしれないです。商売の基本は、お客様に継続してお客様でいてもらうことです。それとも、新規の投資家候補さんに、あんなに大変だった自己紹介から投資戦略と投資事例、投資のメリットに至るまで、1から20まで話さなければならないセールスピッチのような時間と費用を掛けなければいけないことをまた最初から延々とやりたいですか?
なんてあれこれを、投資の仕込みとかしながらあれこれを出来るものでしょうか。3人のうち誰か一人がやりたい投資への気持ちと時間を抑えてやらないと、今と将来が大変になりそうです。
よく、ぽっと出の若くて夢しかない(ベーっ、だ)MBAホルダーが、(自分をさておいて)他人を卑下するように papa’s and mama’s shopと呼ぶ、(事業リスクと自己の資産のリスクを取りながら、創業者マインドを持って日々働く、尊敬するに値する)零細企業の社長さんを見てください。一人で、営業しながら商品の提供をして、(オフィスなんて格好のいいもんじゃありません)事務所の家賃を払いながら大家さんとの関係も大事にしつつ、経理を付けながら従業員のトレーニングと愚痴と将来の夢を聞きながらお給料の計算をして、仕入れ代金とかと合わせて支払って、年に一回の税務申告と年に二回の源泉徴収の納付、年末調整の計算までやりつつ、雇用保険と健康保険と厚生年金の対応もして、当然、資金繰りを常に気にして。。。と、正直やっていることは同じです。
あ、現実として、私もそのMBAホルダーたちが卑下することとやらをやっています(これを書いている2026年の誕生日(あ、プレゼントとお祝いの言葉は365日、いつでも待ってます!)には自分が代表をやっている二社の両方ね。あまり気が付かれいないけど、私、これでも世にいうシリアルプレナーで、作った会社は4つとも全部生き延びているし、経営から離れた二社のうち、一社は世界最大級のファンドアドミの一つに買われているからね。気づいてた?)。事業規模がまだ小さいことを踏まえて、費用対効果を理解した上で、(家族から呆れられつつ、事業継続性と将来の相続のための手当をしろよと言われながら) 24時間365日、人に尽くして働くことが大好き!と心から言いながら秘めた野望を叶えるためならそれでもいいでしょう。私自身がそうやっているので人を止める資格はないでしょうけど。。。あなた、本当にそれでいいですか?
もしくは、質問を変えるなら、そんな程度にあなたのファンド・ビジネス、小さいですか?小さいままでいいですか?大は小を兼ねる、といいますが、事業の適正サイズ以上に合わせた陣容は作っておかないと、チームの誰かに皺寄せがいくので事業継続性を外部(ファンドビジネスをするのであれば、お給料の源泉となる投資資金を入れてくれるLP投資家)が疑問視するでしょうし、内部的にはその担当することになってしまった一人の心と体の両方が疲弊して、たったその理由だけで運よく二つ目のファンドを立ち上げた瞬間に事業が崩壊するリスクを孕むことになります。
でも、これって、多分投資後のPMIで投資先企業さんで最初に手をつけることですよね?あ、ベンチャーはリードでもない限りやらないか(苦笑)
もし、地球上にファンドアドミが居なかったら(笑)
さて、もしこんな超手間だけど、事業運営の土台のところは、出来るだけ事業が大きくなる前に手放して、もっと事業を大きくするためのことに時間と労力を振り向けたほうがいい、というのはなんとなくわかりますよね?
としたら、どこを手放せばいいでしょう。
まず、運用のチーム(もしくはGPとなる自分たちの会社)を考えてみましょう。
今どきなら、経理処理はSaaSでほぼなんとかなるし、顧問税理士さんにお願いすれば、自分で日々の財務状況を理解しながら税務届出という最低限のところだけお願いすることで費用とリスクを抑えることが可能です。
同じことは社労士さんとSaaSサービスで人事労務も押さえることが可能です。
これで、ファンド・ビジネスをするチームのことの大半は外にお願いできたことになります。でも、チームとしての資金管理(言い換えると、お金の出入り)と、SaaSのデータ管理はまだ手元に残していますね。要は基礎となる情報は自分たちのところに、実際の当局届出といった行政リスクはアウトソース、という切り分けをしていることになります。まぁ、今時のSaaSなので、アウトプットもしっかりしているので、自分たちのチームに出資をした創業者たちへの財務報告、はそこからすれば十分でしょう。
なので、経理総務労務人事を見る人は一人いて、アウトソース先の管理監督者として働いてもらうのが中小規模の事業運営ではバランスの取れた運営、とも言えます。まぁ、大企業になれば社内に社労士や税理士など抱えて全部自社で、という発想になるでしょうけど、それはそのステージになってからにしましょう。
言い換えると、他の業種の事業運営の考え方を普通に入れられる、ということなんですね。まぁここまでは、言われる前にやっているよ、という人がほとんどでしょう。
でも、同じことはファンドという事業体でも同じことが言えるって知っていました?
ファンドでは人は雇っていないので、労務人事は不要としても、会計・経理、資金調達から始まる資金回りと将来的な予算管理、投資家に向けたIRというところは、会社運営と同じように選任を置いて専門性を持って運営する方が、投資というファンドでの事業目的にリソースを集中できる、というものです。
いわば、これがファンドのコントローラーに相当する仕事、といっていいでしょう。
ちなみに、投資管理をコントローラー業務って定義する人もいます。個人的には否定的な立場です。というのも、投資実行からモニタリング、売却までのプロセスは投資サイドで利益相反を管理しながらポートフォリオ管理として行う方が、企業としての機能別管理の観点で正しいと考えています。言い換えると、モニタリングってポートフォリオのリスク管理で、早期売却という投資判断をするかどうかのツール、に過ぎないんですよね。それは日本の運用業でよく間違える、ファンドというビークル管理と一任投資業に代表されるポートフォリオ管理をごちゃ混ぜにする話と同じなのですよ。もしくは、面倒な仕事はバックオフィス、的な発想をうまく言いくるめた成れの果て、なのかもしれませんが。。。
いつものやる?不思議な国、日本
とはいえ、日本っておかしな国で、すぐに全部を内製化をしたがるんですよね。
この基幹業務はやっていること自体は先ほどのように、運用のチームに特殊なものでなく、むしろ多くの分野の企業でSaaSなどの形でアウトソース出来ているのに、なんとなく自分たちで再発明してしまう傾向にあります。会社の会計処理をアウトソースしているから、ファンドもアウトソースする、だけど、キャピタルコールとか分配は会計原則や税法と関係ないので会計士さんたちは嫌がることからアウトソース出来ないので自分たちでやらねばならない。どうやるんだっけ?といった感じです。
そうなると、その担当者たちがそれぞれに、その時の思いつきや法令の解釈で対応するものの、その後の法令の更新や、投資家が共有して求める情報の傾向などについていかない、もしくはついていけない、というリスクを負いながら運営を進めていくことになるのです。SaaSとか外部の士業の先生だとそんなことないのにね。そして、ただでさえ採用が大変というところで人が増やせない、なんていうから、そういうところで疲弊するスタッフと事業継続性のリスクを産んでいくことになるのです。
さらに言えば、投資先でも投資家でも、情報管理という観点で見ても、やはり自分たちでスプレッドシートベースで管理し始めるので、その正確性や一貫性、継続性、ついでに情報漏洩へのリスクの対応といったことをどこかで考える必要が出てきます。世の中には確かに lean start-upなんて発想もあるのですが、その後の事業拡大に対応するための拡張性とパッチワーク的処理、というのは似て非なるもの、だったりしますので、事業の向かうサイズを見越したデザインと先行投資、なんてことも実は求められるのですが。。。日本では聞かないですねぇ。。。なんでですかね?
実際のところ:ファンドを運営する側面で見る、その役割
ということで、ファンドアドミの仕事とは、ファンドのコントローラー(やそれを司どる運用チームのCFO)の事務作業をその指示に基づいて行うことで支援する仕事、といえばいいことになります。シンプルでしょ?
というと、偉そうな方達からこんな声が聞こえそうですね。
ただの事務受けじゃねーか。
ええ、事務屋ですよ。何か?
ただし、社内で採用するも戦略なく育てずに発生した仕事を考えなしに押し付けて、それを表では車輪の再発明のごとく俺はやった、なんて業界の中で自社というサイロを作って自己満足に満ちたことをせず、きっちり基礎を押えて系統立てた、専門性のある仕事をするからこそ、複数のGPのファンドの事務を集中することで業務プロセスを共通化し、さまざまな投資家やGPのニーズにあったベストプラクティスを可能にするわけです。
そこまでのレベルのものを一から作って、常に世の中の流れを把握しながら維持していくには、GPが自社のファンドのためだけに内製して維持するには人的、費用的負荷と、(一つ二つの成功例は全てに共通する成功というにはサンプルが小さいという)知見の偏りが大きすぎるのです。
もちろん、その結果のメリットも大きくて
- GPの事務回りのリソース負担の軽減:まぁ、当然ですね。手を動かす人が外にいるのですから、GPではコントローラー/CFOと休暇・急病等の時のバックアップや次世代の育成目的(GPだって10年スパンでファンドを運営するのですから、先を見据えた人材配分も早めにしないといけませんよね?)としてもう一人の二人体制で複数ファンドを運営するにも十分ですし、より主体的なファンドの運営に集中が出来るのです。
- GPを会社の壁を超えた業務の標準化:APIのように、何を準備して提供したら、何がアウトプットとして出てくるか、が決まっているわけですから、コントローラーになるための最低のスキル(アドミに対する指示とその自社として欲しい結果の精査をベースとしたプロセス全体の監督)や要件(会計知識に、プロジェクト管理能力、あとはIR的要素も欲しいですが、まぁ、最低限はこの辺りですかね。)もはっきりして採用もしやすくなるし、そもそもこんな記事が不要になるというものです。
- LPに対するレポーティングの標準化:当然にLP側で個別に見たい情報、というのは千差万別ですが、より多くのLPに対応することでレポーティングの最大公約数と、個別に必要になる情報、というものの切り分けがしやすくなるのは、いまだにILPAをはじめとする業界団体の声ですら実現できていない標準化を推し進める原動力にもなるのです。
- 個別のプロセスに関するベストプラクティスの構築:よく、ウォータフォールの計算や、追加投資家の参加に伴うキャッチアップの計算が「面倒なので」簡略化する、という話がありますが、あれって個人的にLP投資家の本来得るべき利益を損なっているんですよね。たかだか計算すればいいだけの話なのにふざけてます。としたら、中途半端なスキルでの内製化のトレードオフを投資家に寄せるのではなく、専業によるより公正なプラクティスを導入する方が、投資家からのファンド業界全体への信任を高めるのです。
- 将来のコントローラー人材の育成環境となる:これは私が始めて公言している話ですが、アドミの経験を持ってコントローラーに回れば、アドミの活用を備えた人材がいくことになるので現在のコントローラー不足の解決の一つとなります。もちろん、アドミの人材不足も解消すべきですが、ただでさえ(コンサル出身じゃないとファンド業界には入れない、的に)敷居が高くて(ファンド?お金扱うけど実際に何やっているのかよくわからない、と言われている)認知の低いファンド業界の新たな登竜門としてファンドアドミが担い、その先にGPのコントローラー、CFOという運用側へのキャリアパスもある、となれば、アドミ人材の採用にもその将来性に魅力が出てくるというものです。
一つ気をつけてほしいこと:ファンドアドミは誰のために働くのか?
さて、ここで特に日本固有っぽいファンドアドミの取り扱いの話に触れないといけませんね。
組合型のスキームにおいて、確かに、コールをかけて、分配金の計算をして支払い、財務諸表を作って投資家に提供する義務は GPにある、なので、ファンドアドミの費用はGPが負担すべき、という話です。そのほうがLPもファンドのトータルコストが下がるから嬉しいし、GPにしても自社の責任だからやるべき、と思うところもわからないでもないです。
ですが、財務諸表、投資家別資本残高、報告書、さらにはキャピタルコールに分配金の支払いまで、公平性を持って作成・通知・報告することが求められるものです。要は、ファンドって誰のもの?という根本に戻って考えてみるべきところです。そうなると、これらの業務をGPが行うって、ある意味自作自演の数値で進む可能性を孕むところです(これは、公正価値評価における第三者評価の重要性の話と同じであり、また、上場株式などのファンドをやっている人から見て、manager’s mark の信ぴょう性の共通認識から見ると常に違和感を感じる論点でもあります)。とすると、GPの下請けでアドミがこれらの業務を行うのは第三者性が担保できないので、GPのポケットから支払うものではない、という海外のスタンダードから見ても、ファンドのフィデューシャリーデューティの観点でもやっぱり違和感が残るのです。
言い換えればファンドアドミはLP投資家のために働いている、なのでファンド費用として負担する、というのが妥当と言えるわけです。この辺りは、GPだけでなく、LPの認識としても、ファンドの費用は安いに越したことはない、というところから、負担すべきものは負担する、だから質のいいアドミを起用する方が自分たちにとっても安心、という理解が広まって欲しいところです。
ということなので、FSAさんからの強い要請のある、一任運用業者のアウトソース先の事業登録について、ファンドアドミは登録しませんよ、というメッセージでもあるのですが、あれは投資信託の国内特有の構造的な問題なだけで、組合型のファンドには何の縁もないんですよね。。。
まとめ:だからファンドアドミを育てたい
さて、途中で書いた通り、ファンド業界の中でファンドアドミの地位って
ただの事務屋でしょ?
って言われるくらい低いものだと個人的に評価しています。この評価では誰もこの仕事に人は来ないし、人が来ないから専門性を備えた人材なんて当然育たないのです。その結果、ファンド業界のインフラの担い手が少ないことで、事務周りの信頼性に不安のあるビジネスとなってファンドそのものが先細る、という危惧すらしています。
だからこそ、知識と経験をつけた人材が長い期間ファンド業界で活躍するための入り口としてのファンドアドミ、そしてその力を持ったコントローラーというのを作りたい、そのために、業務としてのアウトプットはもとより、ファンド運営を支援する全般において、品質の高い仕事をするアドミがいることで、ただの事務屋ではなく、GPの事業の成長とLPの投資に並走する役割であり働く場所となれば、仕事としての評価も上がり、もっと多くの人をこの業界に呼び込めるのでは、と信じて、日々模索しています。
ということで、そんな明日を作るために一緒に仕事しませんか?

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