公的年金について、その仕組みと老後にどれだけ長生きしたら元がとれるかなんてガメツイ話と、老後以外にもらえるなんて裏技みたいなものがあるのか、という金融系だとよくある安っぽい話をしましたが、これらを踏まえると、あれ、もしかして年金って二つもらえるんじゃない?なんて頭をよぎりませんか。受給資格についてよく考えてみると、実はそれぞれ排他的な定義になっていないんですよね。
なんて、二つもらえる状況ってそもそもどう言う状況よ、って落ち着いて考えたくない話もありますが、でも、人生って何があるかわからない。ならば、そう言う時にどうなるのか、くらいはちょっとこう言う機会だしみてみましょう。
例によって、説明資料として(今回は比較的枚数の少なく詰め詰めじゃない)パワポの資料と、そのパタパタ無声YouTube動画をご準備しておりますので、要点だけちゃっちゃと、という方はそちらへ、それ以外の方は、続きをどうぞ。。。
多分、会社勤めな私たちなら、二つ受給出来る。
さて、まず基本的なところで、ここで、二つ、と言う言い方をしていますが、例えば、とても基本的なところで、もし会社勤めだった人が65歳になってちゃんと保険料を納めていたので受給資格をちゃんと持っている、とします。そうすると、国民年金から老齢基礎年金が、厚生年金から老齢厚生年金がもらえることになります。これで二つですね。
って、まぁ、なんとなくこれ、当たり前っぽいですよね。同じことは、普通に勤めてお給料から保険料を毎月(気づかないものの)支払っている時に、何かしらの事故とか病気とかで年金の世界で言うところの障害等級が2級か1級になっちゃった場合だと、国民年金から障害基礎年金が、厚生年金からは障害厚生年金が給付される、ことになります。まぁ、これも二つ。
遺族になったときの年金受給はちょっとハードルが高かったのですが
で、老齢年金以外の受給方法の記事で一番面倒だった話が、自分がある一定の年齢で、ちゃんと年金保険料を払い続けていた勤め人の配偶者なり、親なり、子なり、孫なりがなくなって、自分よりその人に年金受給の意味で近い人がいないと、厚生年金年金から遺族厚生年金がもらえて、もし、自分の配偶者が亡くなったときに18歳未満の子供を抱えているか、自分が18歳になるまでに、両親が亡くなるなんて状態だと国民年金から遺族基礎年金がもらえる、と言うことなので、もし(あなたが女性なら年齢制限はない一方で、男性なら55歳以上だったら、と言う年齢の縛りがありますが)自分たちに18歳未満の子供がいる状態で配偶者が亡くなると、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方がもらえる、と言うことになります。
これらのように、同じ要因によって受給権を得た国民年金と厚生年金については両方とももらえる、と言うことになっています。思い出してください。国民年金は年金制度の1階部分、厚生年金は2階部分、でした。だから(遺族年金を除くと)厚生年金の受給権のある人だと両方とも受け取れる、のです。
自営業は(この点は)辛いよ
逆にいうと、これら全ての話に共通して言い換えられるのが、もし対象となる人が(老齢年金や障害年金だと自分が、遺族年金だとなくなった人が)企業に勤めておらず厚生年金に入っていなかったりすると、そもそも厚生年金からの給付がないので一つしかない、と言うことになるので、二つもらうのがそもそもちょっとハードルが高そうに見える、のです。
ここで一つ、お願いというかお断り
さて、ここではそこまで単純な話じゃないことに触れる予定なのですが、ここでまずお願い。すでに人が亡くなる前提の話を書いていますが、二つ年金がもらえるなんて話になると、少なくとも老齢年金なら老いについて、障害年金なら働けなくなる事情、要は傷病にについて、で、遺族年金なら誰かが亡くなることについて前提を置いた話になります。しかも制度的な落とし穴みたいな話になると、(ネタバレですが)障害等級の微妙なレベル感と就労問題にまで踏み込みます。
まぁ、書いている本人だって、これって人のプライバシーに直結した話だから不謹慎だし気持ちのいい話でもないし、そこまでしてお金かよ、って話にも思っています。でも、老齢年金や障害年金をもらうと言うことはそれらの事情で働けないだけでなく、諸般の事情を踏まえて働かないと言う自己の選択をした場合も入りますし、遺族になると言うことは、その生活を支えてくれていた人がいないので、それらの状況でどうやって生活を維持するのか、と言う問題に直視しているわけで、それらをいかに迅速に対応できる社会制度を作るか、がこの国民年金と厚生年金という公的年金です。誰もがどれかしらにどこかの年齢やタイミングに当たる可能性は否定できません。当然、法制度も年々社会環境の変化に対応しようとしても対応できないところだって生み出されてきます。だって人間が作ったルールなのですから。ですので、感情ではなく法律に従った物事とその解釈なんだ、と割り切って読んでいただけると助かります。
こうは書いているけど、 そもそもそんなに日本は優しい国ではなくて
では、ここでいう「二つの受給権をもらえる場合」、というのはどういうことでしょう。まぁ、わかりやすいのが、遺族年金をもらっていたら65歳になって老齢年金の受給権が発生した場合、ですね。もしくは、障害年金をもらっていたら65歳になって老齢年金の受給権が発生した場合、です。もちろん、障害年金をもらっていたら、遺族年金の受給権が発生したもありえますし、遺族年金をもらっていたら障害年金をもらう事態に陥った、だって当然ありえます。というか、3つの年金の中から2つを得る組み合わせですから大体こんな感じです。
で、結論から言ってしまうと、国民年金の中で二つの受給権を得たらどちらかを選ぶことになり、同じく厚生年金の中でも二つの受給権を得たらこれまたどちらかを選ぶことになります。言い換えると、一人で二つの受給権に基づく二人分の年金の受給を受けることが出来ない、のです。ただし前述の通り、同じ原因に基づく受給権に基づいた国民年金と厚生年金の受給をそれぞれ受けることができますから、じゃあ、それでいいんじゃない、って話にもなりますが、そこは諸般の事情で組み合わせでの受給ができるようになっています。まぁ、その組み合わせがちょっとややこしいのでテストに出したくなるわけなのですが。。。
ちなみに、最近ちょっとどこかで言われている若者の将来の話の一つでも。。。
別の形で二つ分の年金受給権が発生しそうな場合として考えられるのが、不運にも両方の親が亡くなった場合の遺族年金で、この場合二人とも年金保険料を払っていたんだから、その分それぞれに受給資格がもらえそうですが、どちらかの親の分だけが請求できるそうです。民間の生命保険とかなら二人ともしっかり保険料を払い続けていたから両方とももらえるはずなのに、と思うと、その観点から見ると変な話ですが、そういう法律なので仕方ありません。この場合、受給金額が国民年金で 780,900円 (もし弟や妹がいたら2人までだったら224,700円に人数分を、3人以上だと、最初の二人には224,700円を三番目以降はその1/3の74,900円をそれぞれ加算)、厚生年金が300ヶ月保証でそれまで納めた保険料の総額の5.481/1000 (と平成15年3月までの分はその総額の 7.125/1000)の3/4が受給されますので、国民年金はどちらでも、でも厚生年金だとより働いて稼いでいた方の年金が自然に選択されるでしょう。
いずれにせよ、受給権は遺族年金の記事のとおり、受給権は18歳で迎える3月まで、ですから(高校の授業料が無償化されたとしても)年金だけで食べ盛りが生活して学校に行って、なんて難しいのであしなが奨学金とかないと将来ある若者の未来を作ってあげられない、というのがこんな形で見て取れます。
テストに出る給付の組み合わせ問題
さて、この三つのケースの組み合わせはどう選ぶことができるのか、というのはこのテスト用丸暗記テーブルをまず見た方が早いのでお見せするとこんな感じです。
ぱっと見、障害基礎年金の受給状態だと厚生年金は選びたい放題に見えるし、他方で遺族基礎年金だと厚生年金に対する選択権の融通が全くない、なのに、遺族厚生年金も国民年金に対して無双状態、って覚えればいいだけ、に見えますが、そもそもこれをどう考えるのか、ちょっと見てみたいと思います。ま、この解説は初学者な私の説明ですので、立法者など中の人が考えた理由とは異なりますのでご了承を。
無双状態な障害基礎年金との併給の組み合わせ
一番簡単なところで、障害基礎年金を受給しているケースの背景を考えてみますと、勤め人だった時に受給権を発生したならば障害厚生年金を受給していると想定できますが、勤め人を辞めた後やそもそも自営の人がそうなった場合は障害基礎年金だけ、になります。としたら、65歳になった際に、勤め人だった人ならばその時の加入に基づく老齢厚生年金の受給権が発生するので、その権利を享受できないのはその後の生活維持の観点でも、また保険料を支払っていることを含めても不都合だという判断になるでしょう。また、同様に自身とある意味関係なく発生する遺族厚生年金も積極的に受給できなくする理由は、障害基礎年金を受給するほど働けない人にとってはない、と考えることが出来ます。
なお、障害基礎年金の受給額は老齢基礎年金の満額支給である年額 780,900円、もしくはその125%ですから、仮に老齢基礎年金の受給権も得た際に障害基礎年金とどちらを選ぶ、となれば、満額支給でない可能性のある老齢基礎年金より障害基礎年金を選択することは合理的でもあるので、同一事由による受給に揃えるより、前述のような柔軟性が与えられていると考えた方が一理ありそうです。
老齢基礎年金との併給がある意味厳しい理由とは
老齢基礎年金ですが、遺族厚生年金については自身が老齢厚生年金を受給できない人にとって不利益にならない配慮、と思えます。では障害厚生年金との併給が出来ないのはどういうことか、というと、障害等級3級でない場合に限っていえば、障害厚生年金の受給権があるということは障害基礎年金の受給権もありますので、老齢基礎年金の受給権を得た時に、老齢年金を取るか、障害年金を取るか、という選択を求めているように思います。とはいえ、老齢基礎年金より障害基礎年金の方がより多いことが想定でき、老齢厚生年金より計算上の300ヶ月保証のある障害厚生年金の方が同じか多い、ただし、障害厚生年金には配偶者加給年金が、老齢厚生年金には加給年金が配偶者と18歳未満の子の数に応じてある、という計算上の逆転の可能性は残りますが、上記の議論にもある65歳時点での18歳未満の生計を一にする子のありかたを考えると、一般的にはここはほぼ同条件と考える方が妥当でしょう。とはいえ、実際にはそれを踏まえた、障害基礎年金と老齢厚生年金の組み合わせは障害基礎年金のところで説明したように許容されています。これらを思えば、より不利になる老齢基礎年金と障害厚生年金の選択肢を潰してくれている、という解釈も可能になります。
遺族基礎年金との併給は悩ましく
さて、遺族基礎年金ですが、老齢厚生年金との併給ということは老齢基礎年金との選択肢がある状態で、その時点で生計を一にする18歳未満の子がいる場合しかなく(というか、18歳未満の子供だけの家族のケースはどう見たってここでは成立しませんよね?)というと、そんな65歳で最長18年しか続かない(それだって十分長いのかもしれませんが、人生100年時代だったら83歳まで、ですからね。とはいえ、その状態とは64歳で0歳児の子がいて配偶者を失うってどういう状態なのでしょう。。。)遺族基礎年金をあてにするより老齢厚生年金との併給が可能であって一生涯持続する老齢基礎年金に切り替えての老齢厚生年金の受給の方が妥当だし、同じ理由は障害厚生年金との併給を考えるならば(障害等級が3級の場合を除けば)老齢基礎年金と同じ理由と推測できます。
悩ましい障害等級3級の受給問題
ここで、ちょっと厄介なのが、上記で何度も下線を入れて強調している障害等級3級の場合、障害厚生年金の受給権があるけど障害基礎年金の受給権がない、という事実です。先ほど不利な組み合わせだ、と書いた老齢基礎年金と障害厚生年金の組み合わせが欲しいのが、この障害等級3級の場合にあたります。この等級の傷病の治癒状態というのは、働けないわけではないが障害のない rest of usのような人たちのようには働けない、という感じで、他方で国民年金の保険料に対する法定免除が障害等級2級以上、ということでこの免除対象にもならないことを踏まえると、老齢基礎年金と(法令等には直接こうは書いていませんが、主に障害者雇用を通じた)雇用されることによって受給権が生じることを期待される老齢厚生年金のセットの受給を法律上(民間の努力によって達成されることを)期待しているようにも読むことが出来ます。もしきつい言葉を選んでいる、と言われることを予め甘んじて書くならば、要は公的の保障制度に頼らずに働いて稼いで頑張って踏ん張って、という社会制度になっている、というところでしょうか。そのため、65 歳以降の年金として、障害厚生年金から障害等級3級として、300ヶ月保証のある報酬比例計算だけど配偶者加給のない厚生年金受給「だけ」か、納めた保険料に応じて受給する(ということは300ヶ月保証はない)老齢基礎年金と老齢厚生年金のどちらを選ぶか、という問題に直面するのです。
これこそ、経済的なメリットがどちらにあるのか、という計算が必要になる一方で、本当にその選択肢を迫られる65歳の時点で公的年金にどれだけ頼ることなくそこからの生活の備えを出来てきたか、を問われる局面です。でも、これは誰もがこのような法制度上の落とし穴に簡単に落ちるリスクがあるのでそれを踏まえた準備はいつ始めても遅くはない、と思って準備した方が良いし、じゃあ、今からどうしたらいいの?ということにお手伝いするのが資産運用のプロであるFPの役割じゃないのかな、と思うところです。
まとめ、というか一番大事な事実を一つ
そうそう、忘れていました。年金受給において、老齢年金は所得税の対象で雑所得(公的年金等)扱いですので、110万円までは全額控除という感じで給与所得ほどはきつくはないものの課税対象です。それ以外の障害年金と遺族年金は非課税です。
最終的な手取りを考えると、どちらを選ぶ方がいいのか、微妙に判断が偏りそうですが、老齢年金や遺族年金を受け取れる場合、ここまでの議論を考えるとそれはそれとして、ということで受給しながら所得税も納めつつ働いて生活費を補う、という選択も取れますので、中々年金受給だけでフルリタイア、という世界でもなさそうですね。
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