気づくとシリーズ化してしまっていた、この「プロ投資家ってなあに?」シリーズ。米国、香港、シンガポールときて、次はヨーロッパ?と思っていたあなた。ごめんなさい。書いている本人だって、まさか、この国を選んで書くなんて思っていませんでしたから。
とはいえ、限られた情報から、色々と興味深い論点と注意すべきところが見えてくるのはこのシリーズの面白いところ、と思って付き合ってください。
と言いつつも、大体読むのに10分以上かかる記事を書くこのブログ、忙しい現代に付き合ってらんねーよ、という(自称)忙しいあなた。今回も準備しましたよ。1分ちょっとのYoutube動画と SlideShare で好きなペースで流し見できるコンテンツを。
まず、最初に注意喚起!
もしあなたが東京でインドネシア人やインドネシアの企業や年金の投資担当者に対して国内籍ファンドの勧誘を行ったとします。101人目に勧誘したその瞬間からインドネシアの法律で公募を行ったことになるので、インドネシアの金融当局にファンドや運用者としての登録をしていない、という違法行為を行っていることになります!
ん?と思ったでしょ?日本にいるのだから日本の法律に従って、国内のファンドの募集をルールに従って公募の届出をすればいいだけじゃない、というかもしれません。まぁ、50人以上の国内にいる人への募集だから、それも必要ではあるのですが、インドネシアの証券関連法において、募集行為について次のように定めているのです。
インドネシアの公募とは
募集対象
- インドネシア領域内か
- (世界中どこにいても)インドネシア国民に対して
募集方式
- マスメディア(新聞、雑誌、映画、TV、ラジオ、その他電子媒体、手紙、ブローシャーなど印刷媒体を100部以上配布すること)
募集・勧誘人数 (100/50 test)
- 勧誘行為を100人を超える人(法人を含む)にすること、もしくは
- 50人を超える人が証券を購入すること
ということで、ファンドの募集に当たってはインドネシアの国外であってもインドネシア国民に勧誘行為を行うと、100/50 test と呼ばれる人数のカウントが始まるのです。
また、公募の定義がこうやって定まっているものの、私募の定義がないので、いわゆる私募をしたい人は、これに当たらないように募集を行わねばならない、と考えることになるのです。香港と同じアプローチですね。
インドネシアのファンドや運用会社の登録
念の為、もし在日インドネシア人に大受けしてしまってファンドが50人以上に売れてしまった場合、インドネシアの公募にあたるので、ファンドの登録と運用会社の登録とを行わないといけなくなる(正確には、募集開始前、ではありますが。。。)ので、ではどうしたらいいか、と思いますよね。登録の手続きって、やっぱり面倒でしょうか。
実は、インドネシアから見た外国籍ファンドや海外の運用会社の登録手続きが何も定まっていないので、登録できない、そうです(!)
ということは、テクニカル・ブリーチ(法制度上の不具合による違反状態)が解消できないことになります。もうインドネシアに足を踏み入れたら。。。(ガタガタブルブル)
インドネシアの公募に当たらない募集、とは
という、たまには怖がらせる(?)展開にしてみましたが、ちょっと驚きでしたよね。アメリカ人の納税制度じゃあるまいし、世界中どこにいても適用されるなんて。。。ということなので、ここからリバース・エンジニアリングした、公募とみなされない募集方法、というのがポイントになります。そう、100/50 test を使うしかないのです。
愚直に、100人までは声がかけられる、50人までは投資家として受け入れられる、と考えて、勧誘の時点から国籍を確認して、インドネシア人だったら 「いーち」「にー」と数えていく他がなさそうです。
なお、募集の仕方でよく「噂で聞いたからコンタクトされちゃって、仕方なく紹介したんだよねぇ。自分からお年に行ってないよ」と言い訳に使う、リバース・ソリシテーション、これもインドネシアでは勧誘行為にあたる、とされていますので逃げられません。直接的、間接的、問わず、だそうですから諦めましょう。
他方で、5年経っても、100人への募集が達成できない、50名の投資を受け入れられていない、となると、5年先以降も公募扱いにならないそうです。まぁ、そんなモメンタムの低いファンド、売れますかねぇ。。。
で、プロ投資家、誰よ?
ええ、本当、ここまで募集の話をして、プロ投資家なら免除、的な話が出なかったものだから、プロ相手にする理由もなさそうな気がしますが、インドネシアでのプロ投資家って、「投資資産が十分にあって」「投資経験が十分にある」人、という程度で特に登録制にもなっていないらしい。そんなプロ投資家になら、現地の銀行がライセンスをとって海外ファンドを売ってもいい、というルールがあるそうなのですが、前述の通り海外ファンドの登録プロセスがないので登録できないから実際には、国内のファンドでプロ向けのものだけがそういう対象のようです。
実際、現地のバイアウト・ファンドのような低流動性資産投資の場合も、運用者は現地当局 (OJK)への登録がミューチュアルファンドと全く同じように必要とされていて、でもファンド自体は投資家をプロ投資家に限定し、また投資家数も 50に限定することで公募にならないようにしているそうな。そう言われると、海外のファンドも
“私のファンドはインドネシアでは募集を行っていません”
という一文を目論見書に入れて、インドネシアからは最大 50の投資家しか受け入れないようにする、という、郷に入っては郷に従う他なさそうですね。
まとめ
ちなみに、今回の調査で一番感じたのが、英語での情報量が極めて少ないということ。ということは、多分日本語で解説したのはここが初めてでは?と思うくらい。(俺の方がさきだ、という人、ぜひご連絡ください。)
とすると、正直いえば上記を信じて検討はできるものの、実際には現地の弁護士とぜひ確認してビジネスをしてほしいと思います。シンガポールにはインドネシアだけでなく、その他東南アジアの富裕層が集まりますので、勧誘をしていてふと気付いたら。。。なんてこともあり得ますしね。
と思うと、ファンドの募集にあたっては、闇雲に対象国を増やすのはあまり得策じゃなさそう、やるなら、現地のパートナーにフィーダーをやらせる方が効率的かつコンプライアンスリスクを負わずに済む、という気がします。いつもの通りですが、「ファンドをやるなら計画的に」。
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