運用報酬 – management fee

ファンドの世界で、「ポートフォリオ運用にかかる報酬」、という意味ではある一方で、これ自体色々な意味を持つ言葉なので特に戦略やスキームに注意して判断する必要がある。

投資信託の場合

例えば、「ポートフォリオ運用にかかる報酬」という意味で国内籍投資信託の世界だと「信託報酬」という言葉で括られることがほとんど。でも、この場合の信託報酬には

  • ポートフォリオ運用をする投信委託会社に対する報酬
  • 受託者で資産を保有・管理する信託銀行に対する報酬
  • 投資信託の販売を行い、継続的に投資家に情報開示を行う販売会社に対する報酬

をさす。一応、目論見書などではこれらの役割ごとの報酬がいくらになっているのか明細を開示することになっているものの、商品を売る際に「信託報酬」が高いか安いか、というと安いと売りやすいから、ということでこの総額を削るべく、これらの関係者で取り分を減らす圧力を掛け合っている(と言って、大きな声では言えないが、販売会社の報酬が下がったことをみたことはないが)。

ちなみに、信託報酬が高いから運用成績がいいとは限らないが、安いからと言ってパフォーマンスが手堅いわけでもない。

外国籍投資信託の場合

もしこれをケイマン諸島やアイルランド、ルクセンブルクのような外国籍投資信託の世界になると、ポートフォリオ運用にかかる報酬は一義的には実際のポートフォリオの売り買いだけでなくファンド全体の管理をする責任者である「管理会社 – management company / manager」に対する報酬 (management fee) を指す。

ちなみに、実際にポートフォリオの資産の売り買いの判断と執行を行うのは投資一任業者 (investment manager) なのですが、その権限は管理会社から委任されているのでその一任手数料 (investment management fee) は管理会社から支払われることになる。日本の投信だと、投信委託会社がこの役割を兼ねてしまうので、管理会社 = 一任運用者に思われるが、海外のケースでは一任業者が運用のガイドラインから離れるような運用を行うと管理会社が見つけて辞任させることも出来るので運用にけん制が効く(内部統制が効いている)状態になる、のが日本と大きく異なるところである。

同様に、受託者 (trustee) は単純にその名義で資産を保有し、その責任を負うだけなので、純資産(net asset) の計算や資産売買の際の資産移動の管理や有高チェックのような部分は事務代行会社 (fund administrator)が行い、実際の資産の保管・決済による出し入れの作業を保管会社/保管銀行 (custody / custody bank)が行い、投資家の出入り、持分の移動の管理を行う名義書き換え代行会社 (registry) がそれぞれ行うので、報酬もこれらに対して払うべく、細分化される。

となると、国内投資信託の「信託報酬」と同じ意味のものは「管理報酬」ではなく、管理報酬や受託報酬 (trustee fee)、事務代行報酬 (administrator fee)、保管会社報酬 (custody fee)、名義書き換え代行報酬 (registry fee) の合計を指し、その料率 (Total Expense Ratio – TER) が安いか高いかが呼応することになる。

ちなみに、これらの様々な報酬について、ファンドの資産からこれらの関係者は報酬を支払ってもらっているのでファンドのためにそれぞれの役割を果たすと言えます。もしこれが、一度運用会社が全額受け取って、それをそれぞれの関係者に支払う、なんていう仕掛けになっていたら、それぞれの関係者はファンドではなく運用会社のために働いていることになるので注意が必要である(最近はこんな見えすいたのはあまり見ないが。。。)

オルタナティブ投資の場合

前述の従来型の伝統的資産運用と異なり、オルタナティブ資産や戦略を使うファンドになると報酬の計算根拠が預かり資産ではないものを使い出したり、預かり資産を増やしたことに対する成功報酬 (incentive fee) の概念を入れることが極めて多い。

ヘッジファンドの(hedge funds)ようにユニットトラストや会社形態のファンドで投資期間に期限のないようなものだと、投資してからか年度はじめから年度末の上昇率に対して成功報酬を決めることになるが、バイアウトファンド(buy-out funds)やベンチャーキャピタルファンド (venture capital funds) と言った未上場株式などに使われる組合形式のような投資期間や投資対象が個別に評価できる場合だと、投資期間中の超過収益に対して成功報酬を決めることが一般的。

なお、興味深い話の一つ(ということはただの余談)として、ヘッジファンドの成功報酬は運用報酬の一部を構成するため運用会社の法人税 (income tax)の対象となるが、バイアウトファンドやベンチャーキャピタルファンドは、自身の投資する無限責任組合員の超過収益の配分の結果として受領するので無限責任組合員のキャピタルゲイン税(capital gain tax)の対象となると解されることが多い。


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

error: Content is protected !! こんな記事、コピペして使うなんて。。。恥ずかしいです