このところ、ちょっと芸風を変えて、コンテンツをまずPowerPointで作って、SlideShare に投げてます。こうすると、本当に要点だけのコンテンツが出来るので、いつものような脱線が起こらない。。。はず、なのですが、ちょっとだけはみ出てますね。
で、その勢いでコンテンツを音声のない動画というかスライド動画にして こんな風にYoutube にあげてみたり。
まぁ、Youtuberになるとは思わないものの、どうも最近このサイトへのアクセスブロックを某銀行さんが始めたらしく、読者が激減。まぁ、それ以上に、記事がアップされたと思ったら食べ物ばかり、では飽きられちゃいますよね。ですので、色々な形でお送りしたらより多くの人に届けられるのでは、と思って試行錯誤中です。
で、本編の AML/KYC の話ですが
タイトルの通り、最近、AML/KYC の手続きが厳格化されているのは、FATF の査察を控えた日本だけに限った話ではなく、OECD諸国をはじめとする世界各国で(それこそ、CRSに入らないと言っていた台湾ですら、2020年9月から日本とAEOIを始めるそうですから)その程度はあれ起こっていることです。
よくオフショアはそういうのが緩い、なんて思っている人もいるのですが、ケイマン諸島は以前の記事の通り、AMLに関する法規制を導入して各ファンドに専任の担当者を置いて当局への報告を直接出来るようにせねばならなくなった、というのは実はオフショアのみならずオンショアですら結構例を見ない、厳しい制度なのです。
その結果、投資しようとすると本人確認のための書類提出要件が増え、片っ端から書類を探し、必要に応じて原本証明を資格のある人に署名してもらう、などの手間すら求められ、また投資申込書の中の投資家としての表明保証の内容も結構細かく、見落としてしまいそうなことまであ流ので契約書のレビューと同時に自分たちがどこまで正しく表明保証できるのか、自分たちの投資家としてのステータスなどの見直しすら求められているように思えてきます。
そういう実務をやると思う日本の基準
個人的にあれこれ海外との比較をし、それを実務者同士で話すときにいうことの一つに
日本のAML/KYCの基準って低いっすよね
というのがあります。いや、低い分楽させてもらっているから文句を言ってはいけないのですが、とはいえ、なぜそこに基準を置いたのかがわかるようなわからないようなものがあるので、いい機会でもありちょっといつもの脱線気味に描いてみますが。。。
PEPs はなぜ海外だけ?
まず、これは誰に忖度したのか知りませんが、PEPs – Politically Exposed Persons: 重要な公的地位にある人、について、最近まで日本ではノーマークでした。それが最近のAMLの規制強化に伴って対応をし始めたのですが。。。海外のPEPs だけ。国内PEPs については引き続き一般人と同じ扱い。海外ではそんな差はつかないのになぜでしょうね。。。
犯罪収益移転防止法をベースにする限界
日本で、AMLの観点で一番直面する問題がどうしても広域なんちゃら団の問題だから、それを念頭に置いた法制度が前面に来るのは仕方がない、ところかと思われます。
とはいえ、一部の業界団体を通じてAMLの観点で政府が日々更新しているブラックリストをみていると、今度はイスラム国を中心とするある特定の宗教的過激派の国際指名手配に偏りがあったりします。しかもこれは犯罪収益移転防止法の外の問題なのは、犯罪収益の移転じゃないから。普通に稼いだ資金を献金するケースだって普通に存在し得るのは、過去に日本でテロが活動した時の資金源が犯罪だけではなかったことを思い出せばわかること。
しかも犯罪性のある資金の移転防止ならば、誰だってPEPs の方がしっくり来ることがわかるのに入れていない。
とすると、AMLは確かに犯罪収益の洗浄もあり得るが、CFT という観点では監督長通達ではなく別の法規制とそれを支える論理が日本には必要なのかもしれません。
実質的支配者の考え方
日本での法人口座開設にあたってのその実質的支配者というのは
- 50%以上の議決権を(直接的・間接的問わず)保有するか分配金を受領する個人
- それがいない場合には25%以上の(直接的・間接的問わず)議決権保有者/分配金の受領者
- それがいない場合には代表権を有する個人
なのですが、最初と最後はさておき、真ん中。この思想は、25%以上を持つ二人がいると二人で結託して50%以上の議決権を有するから、というところではあります。でも最近だと事実上のパートナー制を置く企業もありますので、5人のパートナーで合計して50%以上保有して合議制で運営する、というのだって当然にありえます。となると、10%以上の保有者を確認する、という海外の主流を導入した方が実態に即したところのはずなのですが。。。
非居住者への対応の問題点
日本というところは実は登記所や役所の管理している情報が結構多岐にわたるのでそれぞれが責任を持って証明する資料の内容も詳細。
よく海外だと住所の証明を utility billing: 光熱費の請求書を使うのですが、確かにそこに住んでいるから水道や電気を使う、という意味で日本の住民票登録のような本当に住んでいるかどうか、とは別に作ることができる住所証明と考え方が異なります。
でも、日本の本人確認では、住民票をベースにした身分証明書に記載の住所情報が基本、というかそれ以外は受け付けないので、海外の人に対しては公証役場がサインした書類にある住所を提示してもらうことになります。でも、公証役場の公証って書類の内容ではないんですよね。書類の内容を証する、というサインが目の前で行われたことを確認するに過ぎないのですよね。。。これ、いつも頭を抱えてしまうポイントです。。。
税務よりややこしい投資家としての資格
さて、この辺りの話は実はプレゼンや動画の中でざらっとすら触れていないので、この本編を読んだ人だけのボーナストラック、隠し音源なのですが、実は、似たようなことは某所でもすでにざっくりとは(かつこんなに好戦的な感じなトーンとはかけ離れた感じで)触れています。でも、このところ頭を悩ませ、時間を取られているのは実は投資家としての資格、についてなのです。
プロ投資家、と言っても国によって異なる
というのも、いわゆるプロ投資家の条件等というのが国によって異なるので、自分がその国ではどういうステータスに当たるのかを考え直す、ということは現地の法律にも理解する必要がある、ということなのです。例えば。。。
日本には3つのプロ投資家のステータスがある
よく、適格機関投資家、って言葉はファンドを作ろうとか、作ったことのある人には馴染みかと思います。投資運用業を取らなくても、適格機関投資家等を一人でもいいからファンドに呼べればその人のための運用ということで金商法の第63条に基づく特例業務という届出さえすればファンドの運用が出来る、みたいな。まぁ、この特例業務は実はむしろそういう無免許の人たちを投資のプロである適格機関投資家が監視しているのよ、という位置付けで置いているのですが、現実は未だそうでもないようなので当局への報告義務が増えているのですが。。。
でも、似て非なる適格投資家、という言葉の意味と適格機関投資家との違いを正確に説明できる人ってのはなかなかいないかと思います。さらにいえば特定投資家、というカテゴリーもあるのですが。。。
実は特定投資家については遠い昔に解説をしたのですが、気づいたら当時とちょっと位置付けが変わったようでもあるのでここでこれらの三つを分解する、最新の説明でもしてみようかと(って、これでだんだん長くなってきた。。。)
適格機関投資家 – 金融当局を始め、誰もが認めるほんまもんのプロ投資家、なので実は義務もあったりする
このサブタイトルをみて、笑った人も多いはず。あまりに当然すぎるから。でも、適格機関投資家の定義に立ち返ると、誰もがプロと認めねばならない理由があるのです。というのも、適格機関投資家になるには、条件を満たしたことを証明しながら金融当局に届け出て適格機関投資家になるか、金融機関のように生まれながらにしてなっているか – 法の定義に当てはまるか、の二つしかないのです。何れにせよ、適格機関投資家になると金融庁のホームページにある pdf ファイルのどれかに名前が出てしまうので、どうしても誰もが認めざるを得ないプロ投資家だし、名前がないということは適格機関投資家ではない、ということなのです。
さて、プロ投資家だから、金融取引する時にはちゃんと投資対象のことは理解して当然だよね、だから投資家保護の対象にならないよ、というのは直感的にわかるのですが、このblog でもちょいちょい触れる、金融商品取引業の登録免除、というかバックドアというべき、金融商品取引法第63条に基づく適格機関投資家等向け特例業務というものが、最低でも1人の適格機関投資家が投資する集団投資スキームに関する特例規定なので、金融商品取引業への登録が面倒だ、と考える人たちが騙してでも、お金を出してでも、適格機関投資家からの少額でもいいから投資を受け入れたい、という気持ちを煽ることになるのです。が、なぜ、そこに適格機関投資家が入ることで特例業務を行わせることが出来るか、というと、その適格機関投資家が特例を得て運用や販売を行う業者を監視するため、というものですので、実は適格機関投資家は義務を負ってその役割を果たさねばならない、ということでもあるのです。大変ですねー
特定投資家 – 金融機関が取引の時にプロ扱いしていいからある意味守ってもらえない投資家
で、案外その存在を知られてそうで知られていないのが、特定投資家。これこそがプロ投資家、ということで投資家保護の恩恵を受けない投資家、反対の意味でいえば、勧誘時の投資商品に関する適合性の原則の確認義務とか、販売時に手間のかかる契約締結前交付書面の交付義務や、投資期間中の運用報告の際に、法令で定められた、それを聞く意味がよくわからないような情報を含んだ、だからと言って本来聴きたい情報が法令で定められていないと入ってこないような運用報告書を交付する義務、というか手間をかけないでいい都合のいい投資家、なのです。
で、どういう人がこの特定投資家に当たるかというと、金融庁のホームページにあるように
- まずほんまもんのプロ投資家である適格機関投資家。
- 国
- 日本銀行
この辺りは、責任ある人たち、ということもあり、プロ扱いするのをやめて、と言えません。厳しいですねぇ。
続いて、こんな法人たちもプロ扱いされるのですが、もしプロ扱いやめて、と言えば許してもらえるのが上の3者との違いです。あ、金融庁のホームページからのコピペね。
- 特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人
- 投資者保護基金
- 預金保険機構
- 農水産業協同組合貯金保険機構
- 保険契約者保護機構
- 特定目的会社
- 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
- 取引の状況その他の事情から合理的に判断して資本金の額が5億円以上であると見込まれる株式会社
- 金融商品取引業者又は特例業務届出者である法人
- 外国法人
で、見て気づく人は気づきそうですが、この特定投資家に個人はなれないように見えます。適格機関投資家にはある一定の資産規模や投資経験などを示せばなれるのに、です。でも、法律をよく見ると(いや、金融庁のページをよく見ると)個人でもある一定の条件を満たすとこの特定投資家になれそうなのです。どういう条件かというと
- 匿名組合の営業者、民法組合の業務執行組合員又は有限責任事業組合の重要な業務執行決定に関与し自ら執行する組合員である個人(出資合計額3億円以上の組合、全組合員の同意取得が要件)
- 以下の要件の全てに該当する個人
- 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、純資産の合計額が3億円以上と見込まれること。
- 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、投資性のある金融資産の合計額が3億円以上と見込まれること。
- 最初に申出に係る契約の種類に属する契約を締結した日から1年を経過していること。
どういうことかというと、組合形式で投資をする際に、その組合を実際に判断して動かす営業者やGPといった役割に法人ではなく個人でなるケースがありまして、ってこういう人たちって個人で無限責任とるんですよ、すごいですよね。でも、VCファンドでは結構多いのですが、そういうファンドを動かす立場にある個人投資家がファンドとして運用を行うときには特定投資家に申請すればなれる、というのが一つ。
もう一つが、資産要件を純資産(ローン控除後、という意味ですね)と資産規模の両方で見つつ、かつある取引のための契約を締結して一年経てば申請できる、というものではあります。でも、この後者、ある契約を締結して一年、ということは、Aという業者と付き合いが一年以上あっても、その取引履歴をBという業者との契約の際には使えないので、Bにとって取引日当日においてはお付き合いが0日ということで特定投資家になれない投資家、ということになるのです。その意味で、この特定投資家というのはプロ投資家、ではある一方、取引のある金融商品取引業者にとっては、という枕詞がつかざるを得ない時もあるので、適格機関投資家のような「誰もが認める」プロとは言えない、というものでもあります。
まぁ、この制度の目的が、自己責任で(ということは、投資対象を正しく理解し、そのリスクを投資前から投資期間中にかけて把握し、リスクに伴う最大の経済的損失に耐えうるだけの資産をもち、そしてそれの受け入れることが出来る)投資できる投資家については、そうではない(丁寧に言い換えるならば、投資対象を正しく理解出来ないか、そのリスクを投資前でも投資期間中でも把握出来ないか、リスクに伴う最大の経済的損失に耐えうるだけの資産をもっていないか、そしてそれが起きたときに受け入れることが出来ないで金融庁か消費者庁に泣きつく可能性があるかの、いずれか(一つでも、、複数でも)当てはまる)投資家に必要な投資家保護(投資前の投資商品に関する契約書の概要のうち投資リスクに関することの説明であったり、この商品が本当にこの投資家に必要なのかという適合性の確認であったり、投資期間中の運用状況を説明するにあたり法律が定める内容(個人的には法の求める要件が投資家の本当に知るべき内容かは極めて疑問ではあるものの)の報告書を作成して提供するなど)の手当をすることなく商品提供を行うことで、リスクの取れる投資家には相応のリスクの高い商品へのアクセスが出来るようにしたい、というのがこの制度、と言えるかと思います(ま、だからと言ってリスクの取れない普通な投資家が必ずしも、今の投資信託で売られているような日次流動性がなければいけない – 従って日本政府が買い支えたい東証に上場している株に投資資金が誘導されねばならない、という事実上の規制がかかるというのもおかしいとは思いますが。株式市場だって流動性が枯渇する時も発生するのだし、必ず売りたい価格で売れる訳でもなく、資産のリスクを測る値動きだって十分激しい世界です。確実な流動性の拘るならば外国為替に行くしかないでしょうし、リスクを抑えたいなならば高格付け債券を buy-and-hold することで発行体の長期リスクだけにベットする戦略すら妥当なこともあるのです。)
で、適格投資家 – さらにゆるいプロ(?)枠
さて、ここまでは、世の中でプロ投資家とググれば説明がそこそこされて、それを元にしたファンドを作りますよ、というGoogle Adwords に引っ掛けようとする、ファンド事業の本質を全く理解していない行政書士や弁護士崩れや怪しいコンサル(ああ、うちもその一つかw)のウェブサイトの広告がわんさか出てくるはずですが、なんと適格投資家の解説をしているところが結構少ない。ま、検索する人も少ないから、かもしれませんが。。。
で、そんな適格投資家、なのですが、まず一番大事なこととして、なぜこれがで、そんな適格投資家、なのですが、まず一番大事なこととして、なぜこの制度というか資格があるか、というと適格投資家向け投資運用業、というのが金融商品取引法のなかで定められているのです(条文でいると、第29条の5)。で、そんな適格投資家、なのですが、まず一番大事なこととして、なぜこれがあるかと言いますと投資運用業の事業登録をするにあたって色々とハードルがあるので事業参入がしづらい、ということでヘッジファンド業界(まぁ、AIMA Japan なんですが)を中心に規制緩和を求めたところ、取締役会の設置不要、資本金の減額(5000万円のところ1000万円に)、資産運用総額は200億を超えないこと、という条件で、適格投資家のみから預かった受任資産のファンドや一任勘定の運用が出来る、という、英語で言うところの “light-touch regime” 、日本語で言うならば規制緩和された登録事業、と言う奴です。
と言うことは、プロとそれに近しい投資家からの資産を受任してヘッジファンドなど運用業を始めたいスタートアップや、海外から日本に事業進出したい資産運用会社が日本の最初の足がかりを作るにあたって比較的大口のプロ投資家からの資金で始めたい、と言うストーリーに最適、なのです。コンセプト的には。
で、この辺りのコンセプトの結果がどうなったかは後に回すとして、この、英語で言うところの “DIM-lite”が相手にできる投資家というのが適格投資家、ではあるものの、その定義を見ると、まぁ、確かにプロからプロっぽいところが入ってくることがわかります。
法律上の定義は、といえば
特定投資家その他その知識、経験及び財産の状況に照らして特定投資家に準ずる者として内閣府令で定める者又は金融商品取引業者(第二十九条の登録を受けようとする者を含む。)と密接な関係を有する者として政令で定める者
金融商品取引法第29条の5第3項
なので、今までの特定投資家までは範疇に入っています。ね?プロでしょ?でも、問題はその先の「特定投資家に準ずる者」と「金融商品取引業者と密接な関係を有する者」という人たちです。
とはいえ、「金融商品取引業者と密接な関係を有する者」は、なんとなく字面から業界関係者ならば入りそうな気がしますよね。ヘッジファンドも通常スタートアップは自己資金や家族からの投資、後は業界などのお友達のお金だったりするのがよくある話ですから。実際、条文を読んでみると
法第二十九条の五第三項に規定する金融商品取引業者(法第二十九条の登録を受けようとする者を含む。)と密接な関係を有する者として政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 当該金融商品取引業者の役員(法第二十九条の二第一項第三号に規定する役員をいう。)
二 当該金融商品取引業者の使用人
三 当該金融商品取引業者の親会社等(第十五条の十六第三項に規定する親会社等をいう。)
四 前三号に掲げる者に準ずる者として内閣府令で定める者
金融商品取引法施行令第十五条の十の七
となっておりまして、ただこの言葉の曲者が「当該」金融商品取引業者とあるので、この適格投資家限定投資運用業者の役職員やその親会社等、と金融商品取引業者の関係者なら誰でもいいわけではないのです。ついでに内閣府令で定める者というと
一 当該金融商品取引業者の子会社等(令第十五条の十六第三項に規定する子会社等をいう。以下この号、第三十三条第二項、第三十四条、第百二十三条第一項第三十号、第十一項第三号及び第十二項、第百二十五条の七第二項第二号並びに第六節において同じ。)又は当該金融商品取引業者の親会社等(令第十五条の十六第三項に規定する親会社等をいう。第百二十三条第十一項第三号及び第十二項、第百二十五条の七第二項第二号並びに第六節において同じ。)の子会社等
二 当該金融商品取引業者が行う一の運用財産の運用に係る権限の全部又は一部の委託を受けた者
三 当該金融商品取引業者が一の運用財産の運用として行うこととなる取引の対象となるもの(以下この号において「取引対象」という。)の価値等(取引対象の価値、オプションの対価の額又は取引対象に係る指標の動向をいう。以下この号において同じ。)若しくは価値等の分析に基づく投資判断(投資の対象となるものの種類、数及び価格並びに売買の別、方法及び時期についての判断又は行うべき取引の内容及び時期についての判断をいう。)に関し、口頭、文書(新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時に購入可能なものを除く。)その他の方法により助言を行うことを約し、当該金融商品取引業者がそれに対し報酬を支払うことを約する契約を当該金融商品取引業者と締結している者又は当該投資判断に関し、当該方法により助言を行うことを約し、当該者がそれに対し報酬を支払うことを約する契約を当該者と締結している者
四 令第十五条の十の七第三号及び前三号に掲げる者の役員又は使用人
五 令第十五条の十の七第一号及び第二号並びに前三号に掲げる者の親族(配偶者並びに三親等以内の血族及び姻族に限る。)
金融商品取引業等に関する内閣府令第十六条の五の二
。。。なんのこっちゃ、と言われそうですが、要は、政令で親会社を入れていましたが、子会社や兄弟会社、その役職員とその親族がこれで入りましたので、これでよくあるヘッジファンドのサクセスストーリーの最初にある
私たちは、最初に自分たちと家族のお金を運用してトラックレコードを作るところから始まったのです。
なんちゃらキャピタルマネジメント会長回顧録より
が出来るようになったといえます。その他の「当該金融商品取引業者が行う一の運用財産の運用に係る権限の全部又は一部の委託を受けた者」はまぁ、国内に拠点を作ったグローバルな運用会社がその運用を他のマネーセンターに振っている時に、そこがシードを入れる場合に使えたり、運用のアイデアを助言会社や運用会社からもらう場合にその会社からシードを受ける時に使える、のですが。。。助言や運用の丸投げをする先が国内だと既に金融商品取引業者登録をしているので最低でも特定投資家扱いになっているので、業者登録していない個人などが来るというのがどうも違和感が残ります。ま、法律なんで。。。
とはいえ、ここまでは身内を取り込むためのルール、としてまだ良いとして、問題はもう一つの「特定投資家に準ずる者」として内閣府令に定めた人たち。ということで、政令とか内閣府令とかあちこちを隅々まで追わないと読みきれないのがこの法律の面倒なところですが、じゃあ、この条文を読むと腰抜かしますよ。なぜなら。。。
法第二十九条の五第三項に規定する内閣府令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 令第十七条の十二第一項第三号から第五号まで、第八号、第九号、第十二号、第十四号又は第十五号に掲げる者
二 その取得する出資対象事業持分(法第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利をいう。以下同じ。)に係る私募又は私募の取扱いの相手方であって、第二百三十三条の三各号に掲げる者
金融商品取引業等に関する内閣府令第十六条の六
。。。他の条文を参照するの?と思いますよね。私もそう思いました。じゃあ、追いかけるしかないですよね。でも、これは実は、根っこでは同じ法律の特例を見に行っています。何かと言うと金融商品取引法第63条に定める、「適格機関投資家等特例業務」に関する投資家の範囲なのです。前者については、
法第六十三条第一項第一号に規定する適格機関投資家以外の者で政令で定めるものは、適格機関投資家以外の者であつて、その取得する法第二条第二項第五号又は第六号に掲げる権利に係る私募又は私募の取扱いの相手方となる時点において、次の各号のいずれかに該当するものとする。
金融商品取引法施行令第十七条の十二
- 国
- 日本銀行
- 地方公共団体
- 金融商品取引業者等
- 法第二条第二項第五号若しくは第六号に掲げる権利に係る私募又は同項第五号若しくは第六号に掲げる権利を有する者が出資若しくは拠出をした金銭その他の財産について同条第八項第十五号に掲げる行為を業として行う者
- 前号に掲げる者と密接な関係を有する者として内閣府令で定める者
- 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
- 資本金の額が五千万円以上である法人
- 純資産の額(貸借対照表上の資産の額から負債の額を控除して得た額をいう。)が五千万円以上である法人
- 特別の法律により特別の設立行為をもつて設立された法人
- 資産流動化法第二条第三項に規定する特定目的会社
- 企業年金基金であつて、財産の状況その他の事情を勘案して内閣府令で定める要件に該当するもの
- 外国法人
- 財産の状況その他の事情を勘案して内閣府令で定める要件に該当する個人
- 前各号に掲げる者に準ずる者として内閣府令で定める者
のうち、太文字にした者を指します。といっても、「金融商品取引業者等」とは法律の第34条に定義された金融商品取引業者と登録金融機関(銀行などの金融機関)なので、もともと適格機関投資家か特定投資家な人たち、だし、5番目は複雑に読めますが、匿名組合や投資事業有限責任組合を使って自己運用するGP会社のことを指しているので、63条特例業務を行うか投資運用業を持っている前提になります。となると、まぁ、資本金か純資産が5,000万円の法人か、内閣府が定める者、とされている
令第十七条の十二第一項第十五号に規定する内閣府令で定める者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 その社員総会における議決権の総数の四分の一以上の数が国若しくは地方公共団体により保有されている公益社団法人又はその拠出をされた金額の四分の一以上の金額が国若しくは地方公共団体により拠出をされている公益財団法人であって、地域の振興又は産業の振興に関する事業を公益目的事業(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第二条第四号に規定する公益目的事業をいう。)とするもの
二 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、その保有する資産の合計額が百億円以上であると見込まれる存続厚生年金基金(改正前厚生年金保険法第百三十六条の三第四項に規定する年金給付等積立金の管理及び運用の体制が整備され、かつ、平成二十五年厚生年金等改正法附則第五条第一項の規定によりなおその効力を有するものとされる改正前厚生年金保険法第百七十六条第二項の規定による届出がされているものに限る。)
三 外国の法令上企業年金基金又は前号に掲げる者に相当する者であって、取引の状況その他の事情から合理的に判断して、その保有する資産の合計額が百億円以上であると見込まれる者
四 次に掲げる要件のいずれかに該当する法人
イ 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、当該法人が保有する資産の合計額が一億円以上であると見込まれること。
ロ 当該法人が業務執行組合員等であって、取引の状況その他の事情から合理的に判断して、組合契約、匿名組合契約若しくは有限責任事業組合契約又は外国の法令に基づくこれらに類する契約に係る出資対象事業により業務執行組合員等として当該法人が保有する資産の合計額が一億円以上であると見込まれること(業務執行組合員等として取引を行う場合に限る。)。
五 次に掲げる者の子会社等又は関連会社等(令第十五条の十六第四項に規定する関連会社等をいう。次条第十一号及び第十二号において同じ。)
イ 金融商品取引業者等である法人
ロ 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社
ハ 資本金の額が五千万円以上である法人
ニ 純資産の額(貸借対照表上の資産の額から負債の額を控除して得た額をいう。次条第二号において同じ。)が五千万円以上である法人
六 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、一の日において、次のイに掲げる金額に対するロ及びハに掲げる金額の合計額の割合が百分の七十以上であると見込まれる会社であって、代表者(令第十七条の十二第一項第十四号に掲げる者に該当する者に限る。以下この条において同じ。)のためにその資産を保有し、又は運用するもの
イ 当該一の日における当該会社の資産の帳簿価額の総額
ロ 当該一の日における次に掲げる資産(第八号において「特定資産」という。)の帳簿価額の合計額
(1) 有価証券であって、当該会社の特別子会社の株式又は持分以外のもの
(2) 当該会社が現に自ら使用していない不動産(不動産の一部分につき現に自ら使用していない場合は、当該一部分に限る。)
(3) ゴルフ場その他の施設の利用に関する権利(当該会社の事業の用に供することを目的として有するものを除く。)
(4) 絵画、彫刻、工芸品その他の有形の文化的所産である動産、貴金属及び宝石(当該会社の事業の用に供することを目的として有するものを除く。)
(5) 現金及び国内の金融機関に対する預貯金その他これらに類する資産
ハ 当該一の日以前の五年間において、当該会社の代表者及び当該代表者に係る同族関係者に対して支払われた剰余金の配当等(株式又は持分に係る剰余金の配当又は利益の配当をいう。)及び給与(債務の免除による利益その他の経済的な利益を含む。)のうち法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第三十四条及び第三十六条の規定により当該会社の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されないこととなるものの金額
七 外国出資対象事業持分の発行者(当該権利を有する者が適格機関投資家、出資対象事業持分の発行者、令第十七条の十二第一項第一号から第十四号までに掲げる者又は前各号若しくは次号に掲げる者である場合に限る。)
八 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、一の事業年度における総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が百分の七十五以上であると見込まれる会社であって前各号に掲げる者のためにその資産を保有し、又は運用するもの
金融商品取引業等に関する内閣府令第二百三十三条の二第4項
と、幅広そうに見えますが、特定投資家に準ずる法人の子会社とか、資産管理業をしている法人であったりと、色々と含んでいるケースもあり、個人でも次を満たす人、というのが主だったところになるかと考えられます。
令第十七条の十二第一項第十四号に規定する内閣府令で定める要件は、次の各号のいずれかに該当することとする。
一 次に掲げる全ての要件に該当する個人であること。
イ 取引の状況その他の事情から合理的に判断して、その保有する資産の合計額が一億円以上であると見込まれること。
ロ 当該個人が金融商品取引業者等(外国の法令上これに相当する者を含む。)に有価証券の取引又はデリバティブ取引を行うための口座を開設した日から起算して一年を経過していること。
二 業務執行組合員等(組合契約を締結して組合の業務の執行を委任された組合員、匿名組合契約を締結した営業者若しくは有限責任事業組合契約を締結して組合の重要な業務の執行の決定に関与し、かつ、当該業務を自ら執行する組合員又は外国の法令に基づくこれらに類する者をいう。以下この号及び次項第四号ロにおいて同じ。)であって、取引の状況その他の事情から合理的に判断して、当該組合契約、匿名組合契約若しくは有限責任事業組合契約又は外国の法令に基づくこれらに類する契約に係る出資対象事業により業務執行組合員等としてその保有する資産の合計額が一億円以上であると見込まれる個人であること(業務執行組合員等として取引を行う場合に限る。)。
金融商品取引業等に関する内閣府令第二百三十三条の二第3項
まぁ、前者はそれでもまだいい方かな、と。後者についても、該当する条項が「投資に関する事項について知識及び経験を有する者」という見出しがついているくらいではあるものの、もともと意図された条項がいわゆる63条特例業務を行う際に連れてこなければいけない「適格機関投資家等」の「等」にあたり適格機関投資家ではないそれ相当と見なされる投資家、をさしていて
令第十七条の十二第二項に規定する内閣府令で定めるものは、その取得する出資対象事業持分に係る私募又は私募の取扱いの相手方となる時点において、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 金融商品取引所に上場されている株券の発行者である会社の役員
二 資本金の額又は純資産の額が五千万円以上である法人であって法第二十四条第一項の規定により有価証券報告書(同項に規定する有価証券報告書をいう。第九号において同じ。)を提出しているものの役員
三 前条第四項第四号ロに掲げる要件に該当する法人の役員(前条第四項第四号ロに掲げる要件に該当する法人とは「当該法人が業務執行組合員等であって、取引の状況その他の事情から合理的に判断して、組合契約、匿名組合契約若しくは有限責任事業組合契約又は外国の法令に基づくこれらに類する契約に係る出資対象事業により業務執行組合員等として当該法人が保有する資産の合計額が一億円以上であると見込まれること(業務執行組合員等として取引を行う場合に限る。)。」)
四 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に前三号に掲げる要件のいずれかに該当していた者
五 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に、前号又はこの号に該当する者として、当該出資対象事業持分と同一の発行者が発行する出資対象事業持分を取得した者
六 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に前条第四項第四号ロに掲げる要件に該当する法人であった者
七 次に掲げる業務のいずれかに、会社の役員若しくは従業者(特に専門的な能力であって当該業務の継続の上で欠くことができないものを発揮して当該業務に従事した者に限る。)又は会社との間で当該業務の助言を行うことを約し、当該会社がそれに対し報酬を支払うことを約する契約を締結した者として従事したと認められる期間が通算一年以上であって、当該業務に最後に従事した日から当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日までの期間が五年以内である者
イ 会社の設立、募集株式若しくは募集新株予約権を引き受ける者の募集又は新事業活動(会社が現に行っている事業と異なる種類の事業であって、新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動をいう。)の実施に関する業務
ロ 合併、会社の分割、株式交換、株式移転、事業の譲受け若しくは譲渡又は他の会社の株式若しくは持分の取得に関する業務
ハ 発行株式の金融商品取引所への上場に関する業務
ニ 会社の経営戦略の作成、貸借対照表若しくは損益計算書の作成又は株主総会若しくは取締役会の運営に関する業務
八 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に提出された有価証券届出書(金融商品取引所に発行株式を上場しようとする会社が提出するものに限る。)において、株式の所有数の上位五十位までの株主として記載されている者
九 当該私募又は私募の取扱いの相手方となる日前五年以内に提出された有価証券届出書(前号に規定するものを除く。)又は有価証券報告書において、株式の所有数の上位十位までの株主として記載されている者
十 認定経営革新等支援機関(中小企業等経営強化法(平成十一年法律第十八号)第二十六条第二項に規定する認定経営革新等支援機関をいう。)
十一 前各号(第六号を除く。)のいずれかに該当する個人に係る次のいずれかに該当する会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。以下この号及び次号において「会社等」という。)
イ 当該個人が総株主等の議決権の百分の五十を超える議決権を保有する会社等(当該会社等の子会社等及び関連会社等を含む。)
ロ 当該個人が総株主等の議決権の百分の二十以上百分の五十以下の議決権を保有する会社等
十二 第一号から第十号までのいずれかに該当する会社等の子会社等又は関連会社等
金融商品取引業等に関する内閣府令第二百三十三条の三
と、ざっくりいえば、上場企業の役員や、非上場でも上場債権とかを発行したことのある企業、上場を目指している企業や上場企業の大株主、上場を目指す企業への上場に関するコンサルをしている企業、などの上場関連の人たちや1億円以上を組合形式で運用してる GP会社の役員、など、という感じです。
もう、何がなんだかわからないですよね。とはいえ、なんとなくそこそこ大きい投資経験があるか企業の上場をやったことがある、などVCっぽいことをやっていると特定投資家に準ずる者、になれそうな気がしてきます。
と言いつつ、まとめようにもまとまらないのですが。。。
まぁ、これ、複雑すぎます。でも、適格投資家を見なければいけない人というのが、適格投資家向け投資運用業者だけ、なので救いといえば救いではあるものの(って、まぁ、今やっている会社がそうだから色々と悩んでいる、というのも現実ではありますが。。。)、とはいえ、海外から見ても、日本におけるプロ投資家向けのルールというのがなかなかわかりづらい、というのも現実のようではあります。なにせ、適格投資家って英語に直すと Qualified Investor となり、それっぽく見えるのも現実ですから。。。
で、この辺りの投資家のステータスについてもっと実は厳しいのがアメリカだったりするのですが、この辺りはこの続き、ということで次の記事のネタにするかなぁ、と。
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