CRS対応、大変ですよねぇ。じゃあ、CRSのない世界に行ってみますか?

CRSのない世界にいざ出発! って、それって一体。。。

このところ、本業もちょっと変わった取り組み方でお仕事をさせていただくことになり、その準備で追われたりする中、その関係で外貨での報酬を受け取ることになりそうなことから、新しく銀行さんとの取引を始めることになり口座開設をさせていただくことになりまして、その書類の準備をしていてふと

あ、日本の銀行開設も CRSがとうとう来たか

と思う瞬間がありました。その横で、関連の会社をケイマン諸島に昨年の頭(2016年1月)に作ったのものの、未だに銀行口座を開けられずにいるのですが、その大きな理由に CRSの影響による会社の関係人の情報開示、というまさにCRSの影響をもろに受けてる管理人ですが、皆様におかれても。。。

CRS、大変ですか?

ですよね。自分の過去のCRSに関する記事を読み返して、ああ、あれって2015年の終わりのearly adoptor たちの話だった、と思い返し、そういえばそのあとの第二陣のころだよなぁ、と思ったら、その第二陣に日本が入っているから今年の1月からプロセスが変わって大変になったんですよ、なんて会話をしているのです。最近。

何が大変かといえば

大変大変、と言いますが、何が大変なのかといえば、口座を開ける側からすればCRSを通じて税務関連情報を提供できるようにするため

  • 本人確認の厳格化
  • 法人に対してはその実質的所有者や影響力を持つ関係者に関する情報の取得(もちろん、それらの本人確認についても厳格に行われる)

により、より多くの情報提供を求められて来ました(ということは口座を開ける側からすれば情報をかき集めねばならなくなった、ので、双方にとって明らかに手間が増えたのです)。しかも、今は入口、すなわち口座開設当初、だけですが、途中での所有権の移動等もあるので今後は定期的な情報更新すら求められることになります。

実例を挙げるならば

日本でも、法人口座の開設の場合には代表取締役の個人情報の提供はまず必須、会社の事業と口座開設目的のヒアリングは当然のこと、税務的観点での居住国がどこであることかの確認、そして法人の直接/間接を問わず影響力をもたらす所有者(この場合25%以上の株式保有を一つの目処としています)に関する情報提供も必須です。
でも、まだいい方です。ケイマン諸島で今銀行口座を作ると、取締役や所有者に関する
  • 銀行からの取引歴を含む紹介状
  • 業界内での評価の高いと思われる人からの紹介状

がそれぞれ必要なので銀行が紹介状を書いてもらえない日本の居住者にとってケイマン諸島での銀行口座の開設は十分ハードルが上がりきった感が出ますが、さらに、本人確認書類の写しに加えて現在の住所に関する情報提供ということで utility bills、すなわち光熱費関係の領収書の提出も求められるのです。しかも、写しの原本証明、かつ日本なら全ての英訳なんかも必要になるのです。管理人の実体験ではないものの、海外でマイナンバーの流出に対する罰則規定が無駄に高いのを知らずに、アメリカの年金番号のごとく軽ーく「日本にはマイナンバーって個人を特定できる番号があるのだからそれを出せ」、とすらいうところもあります。

そうなってくると、自国の銀行に資産を置いておこう、海外には手間かけて開ける意味はないんじゃない?なんてだんだん思い始めてもおかしくないのです。

CRS?うちは参加しないけど、来る?

そんなCRS(と、当然US-FATCA)の要請に対応すべくいろいろな書類をかき集めたり作成する、なんて作業を四苦八苦してやっている横で、LinkedIn 経由でコンタクトをしてきた人が一人。って、まぁ、LinkedIn で繋がってという依頼は結構あるのでそういう当たって砕けていく系か、と思ったら、facebook messenger にまで連絡してきた。しかも興味深いことがちらほら。(以下、カッコ内は管理人の突っ込みというか心の声。)

「あなたのブログを見てCRS 関連の問題を抱えていらっしゃるようですね。(いや、あれは記事にしただけで特にその当時はCRSで問題は抱えてなかったんだけどな。。。)私たちは台湾の保険ブローカーとして20年以上の業歴を持つ会社ですが、台湾は CRSに参加しない国として金融業界の発展を目指すことから、資産を隠す目的の(って、言っちゃったよ。。。)お手伝いが出来るものと考えます。また、日本にまだない保険商品を紹介していきたいと考えています(。。。日本の保険法とか分かってるかな。。。)。今、弊社の人間が東京におりますので一度お会いしませんか。」

で、会って話を聞いてみました。

保険商品のこともちょうど商品分析の記事を書いた後と言うこともあって興味深いのであとで取り上げるとして、まず CRSに関する興味深い話についてまとめてみましょう。

CRSの導入する国、そのタイミングとは

以前のCRSに関する記事では、ジャージー島やケイマン諸島、BVIといったオフショア金融センターで2016年1月から先行導入する、という話を説明していますが、これは2016年1月以降に新規口座開設する者に対する CRSの適用をする、と言う話でした。実際にこの最初の波に乗ったのは 54カ国でこれらの国は2017年までに税務情報の交換が開始できるようにしたのです。

それに対して、2017年1月以降は、日本や中国、マカオや香港、シンガポール、カナダやオーストラリアのような47か国も参加し、2018年までに税務情報交換に参加するとしています。その結果2018年には 101カ国が税務情報の交換が出来る状態にあるということなのです。
ちなみに、日本では2016年12月31日までに開設された口座のうち、CRSの対象取引を行う口座(例えば海外送金を行うことが含まれます)については2018年末までに手続きを完了させる必要がありますので、他国においても同様の追加的情報提供が求められることになるのです。

さて、このOECD のサイトにある参加国のリスト、ぱっと見るとイギリスはCRSに入ったのでUK-FATCAと言いつつリストの中に入っていますが、当然アメリカは入っていません。その他にいわゆる有名どころで入っていない国、ありますね。そりゃ、世界250カ国以上あると言われている中で101カ国しかないのですから、あるんです。その一つが台湾なのです。曰く、台湾は第三の波にも乗る予定がないそうです。

CRSのない台湾、それってどういうこと?

あった人間はマーケティング担当であって税務の専門家ではないのでそこに依拠するのは危険なのでこれは個人的見解での書くことになりますが、まぁ、このブログ自体個人的見解の塊ですので。。。

CRSがなく、日本と台湾の間には租税条約が一つ、しかも日本と台湾との間には正式な政府間の国交がある訳でなく非政府間の実務関係でしかないことから、交流窓口機関を通じて締結された(なので、日本国内では国際条約としての効力のない)ものとして二重課税を回避することの確認だけが定められた条約があるだけです。ということは、日本から台湾の税務当局に対して(もしくはその逆向きにおいて)居住者が現地に開設したと思われる銀行情報の開示を求めにいく合意がなされていない、と解することが出来るのです。要は CRSのなかった頃のままにある、と言ってもいいかもしれません。

そうなれば、確かに口座を開設してもその個人情報を税務当局間で共有することはない、というように考えるかもしれません。それをもって「隠す(hideout)」と言うのですが。。。えっとそれは今どきなので大っぴらに言っちゃいけません(って、彼らは私にだけ言ったのであっておおっぴらに言っているのは私ですね)。

本当に隠せるの?

多分、資産隠しを本気で考える人がこれをみて、いける、と思うかもしれません。でも、個人的見解を重ねるならば多分無理。出国するときの送金先でばれます。いくら外為法の網をかいくぐって100万円以下の送金を重ねたところで、CRSのない国への送金となれば反復的に行えばマークされてもおかしくない、と思った方が安全じゃないですか?
なので、個人的には隠す目的ではなく、その先で何をしたいかで台湾を選ぶべき、だと思うのですが。。。
ということで、CRSの話的には確かに台湾のポジションは興味深いところではあります。本当にそれで資金があつまり金融セクターが盛り上がったら。。。素直にごめんなさいと言って、考え直すかもしれません。でも、どうでしょう。台湾の不動産?台湾をハブに海外投資?うーん。。。

おまけ:で、どんな保険商品だったか

さて、彼らの本題はCRSではなく保険商品を日本にリモートで売りたいそうなのです。ただ、商品性は実は分析した米ドル建て一定期間払い込み型終身保険のそれでした。利回りが少しいい、という違いはありますが。。。
台湾では死亡時の保険金支払いに対する相続税は無税だそうですが、日本では法定相続人一人当たり500万円の控除枠があるので、他の生命保険に加入している場合には使いづらい可能性がある、と言うのは分析の時に述べた通りですが、これの問題点は、保険料の払込期間の生命保険保険料控除の適用外であること、以上に、そもそも海外の生命保険を日本の居住者が旅行先に行ったついでに加入したといって入ることの保険法上の問題があります。保険法では海外の保険会社が日本に参入するには国内拠点の設置を義務付けています。となると、非居住者は現地の法律の適用を受けるからよしとしても、旅行先にいい運用商品があるといって買うことの合法性のリスクを海外の保険会社が負うのか(と言っても、日本の金融当局の監視外の企業ですので何もできませんが)、旅行者が罰せられるのか(罰するってどういうこと?保険業を営むわけでないので法律を知っているとは限らない訳ですし)、ということでなんか扱いが微妙なのです。この点は実はもう少し整理したいところではあるのですが、少なくとも保険代理店のような仲介をしたら確実に怒られそうなのは分かるのですが。。。
いずれにせよ、日本で類似商品が買える以上、あえて海外で買う理由がない、というのが一番な理由になりそうな気がします。。。

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