1円が積み重なってファンドになる。

ファンドって何?今更だけど、基本に帰ろう。

1円が積み重なってファンドになる。
諸般の事情で、過去の記事をこことプライベートのブログと両方共読み返したのですが、そもそもファンドって何?という根本的な話を書いたことがなかったようです。

いや、あるにはあるんですよ。ずいぶん前の大学でのレクチャーを焼き直した記事として一つ。でも、何か整理されていない感じが。。。
なので、ちょっと描き直してみました。諸般の事情で。
どうでしょう。

In a nutshell: ぶっちゃけ、ファンドって何?

法務的な側面はさておいたところで、ファンドとは一体なんでしょう。端的に言えば
  1. 複数の出資者により資財をまとめ、
  2. 一つの目的を遂行するため
の行為、と言えるのではないでしょうか。
どうしても、ファンドというと投資するためにいろいろと作業し、運営していく、というイメージを持ちがちですが、「fund」という言葉を辞書で引けば「基金」という言葉が出てきますが、その際に使われるのは、例えば育英資金の提供であったり、研究費用の援助、というものがまず思いつくところであり、その際には基金として供された資金の運用は二の次、というより、そもそも運用して基金を維持しているなんてあまり思われないでしょう。とはいえ、単に資金援助を行って何も運用をしなければ基金は日々減少していくのも想像に難くなく、となれば資金運用を横で行っているんだろう、くらいにも考えられるわけです。とすれば、私たちが日常思いつく「ファンド」というものは「投資」行為が目的であり、そのリターンを出資者である投資家に返すことが目標になる、ということになります。

ケーススタディに見る、個人投資とファンドでの投資の違い

では、その基本的には比較的シンプルな目的を達成するために、私たちはどうしたらよいのでしょうか。そこで、幾つかのケースを考えていくことにしましょう。

Case 1. ミヤタさんはとあるルールで日本株の投資をすると確実にリターンをあげられる、という秘密の投資のルールを作り上げました。彼はそれを実践するために、自分の名義の証券口座を開けて投資を行いました。

これは、どう見ても個人投資家が自分の思惑で投資を行う、というものですので、ファンドとは呼べるものではないですよね。でも、これではどうでしょうか。

Case 2. ミヤタさんはとあるルールで日本株の投資をすると確実にリターンをあげられる、という秘密の投資のルールを作り上げました。彼はそれを実践するために、自分の名義の証券口座を開けて投資を行いました。彼は、実際に稼いでいる証券口座の履歴をお友達のシオカワくんに見せると「僕にもそのリターンに一口乗せろよ」と、彼の資金をミヤタさんに預け、彼はシオカワくんから預かった資金と自分のそれまでの投資資金を一緒に証券口座において運用を行いました。

多分、こういう話は、株に限らず、FXや、はたまた宝くじの共同購入や競馬の馬券の購入に限らずあちこちで見られる話だと思いますが、先ほどのファンドの基本原理である「複数の出資者の資財」が「一つの目的」に供される、というルールに当てはまるので、一つのファンド、をこれだけで出来てしまう、とも言えます。とはいえ、これでは、私たちの期待する「ファンド」からいろいろな意味で程遠い形ですので、ここに、いろいろな側面から「形式」を入れていく、という作業が必要になります。
例えば、Case 2は単純な「口約束」でお金を預けただけなので、シオカワくんの投資した証拠やいつどうやって預けたお金が返ってくるのか、という約束事が書面上どこにも残りませんし、ミヤタさんもお金を預かってそれを彼の秘密の投資のルールによって投資することを約束することもしていません。そこで、日本の法律でこのような、実際に資金を運用する(実際には事業を行う、ですが)ために、資金を提供する、というケースを契約にする「匿名組合」という法律上のルールがあります。こうすると、

Case 3. ミヤタさんはとあるルールで日本株の投資をすると確実にリターンをあげられる、という秘密の投資のルールを作り上げました。彼はそれを実践するために、自分の名義の証券口座を開けて投資を行いました。彼は、実際に稼いでいる証券口座の履歴をお友達のシオカワくんに見せると「僕にもそのリターンに一口乗せろよ」と、シオカワくんとミヤタさんの間でシオカワくんはミヤタさんにお金を預け、ミヤタさんはその資金と自分の資金を合わせて秘密の投資ルールに基づく投資を、自分の証券口座を通じて行う、という匿名組合契約を締結して、シオカワくんはミヤタさんに資金を預け、ミヤタさんはその資金と自分のそれまでの投資資金を一緒に証券口座において運用を行いました。

と、なります。これでなんとなく日本の法律に基づく契約で守られた、ような形になりました。実際、この匿名組合契約を使って投資を組成し、個人投資家に売られるケースも散見されますが、新しい資産などへの投資を行う必要があるために、既存の法整備が追いつかないがために使わざるをえないのか、もしくは、金融庁のホームページに事業停止の勧告をされたと掲載されねばならないようなケースになるか、そう言ったものも含まれるので気をつける必要があります。

より企業化された投資基盤に

ところで。匿名組合契約を見ると、普段見るファンドに比べて投資家保護の観点で欠落しているものがいくつか見られます。
例えば、一番大きな点としては、シオカワくんが預けたお金はミヤタさんのお金と一緒くたになってミヤタさんの証券口座にあるわけですから、シオカワくんが一度預けたお金は表向きはミヤタさんのお金になってしまっています。その結果、シオカワくんのお金が本来の投資以外にも使われてしまう可能性が否定できない、のです。
また、ミヤタさんは秘密のルールで運用する、と言っていますが、自分のお金だけで運用するだけならば、すっからかんになっても自己責任、といえばおしまいになりますが、シオカワくんのお金を預かる、という点で見ると、シオカワくんにとって、仮に秘密のルールで運用した結果として損失を生じたとしても、例えば途中で諦めて運用を中止して残った資金をシオカワくんに返還する方がベストとなる、といった判断が出来るか、という運用者としての判断が適切にできるのか、という疑問が起こりえます。(運用を中止して資金を返しましょう、なんて判断できる運用者は、とはいえ、実際マーケットにどれだけいるか。。。いないことはない、のは知っていますが。。。)
合わせて、ミヤタさんはお友達のシオカワくんにこの投資話をしていましたが、これがシオカワくんだけでなく、別のお友達のシラキさんや、もっと言えば知り合いでもなんでもない人たちにも乗らないか、と言うかも知れません。そうなった場合に、友人や知人のみならず不特定の人たちにこのような投資機会が提供される場合に、それに投資するのは自己責任で、というわけにいかない、という問題が出てきます。

In the end: 結局どんなスキームを使うのが良いの?

これらの問題を解決するのが、前者が集団投資スキームとして一般的に採用されているユニットトラストであり、会社型ファンドであり、またリミテッドパートナーシップ(日本法でいうところの、投資有限責任組合スキーム)になるのです。
二番目の話については、このような運用を生業として行うならば、運用者の能力や運用体制などに一定の条件を課すようにしましょう、という運用業登録という話になります。
そして、最後については、ファンドの募集や販売に関して、一定の規制や手続きを課すことで、ファンドへの投資機会が、投資家の投資判断に相応のものが提供されるようにする、という募集・販売に関する規制、という話になります。
これらはどれも法令等が定められ、それぞれが適用される国や地域の規制当局の監視のもと運営されていくのですが、前者は、ファンドを設立する場所、すなわち、日本国内で設立するなら日本法が、ケイマン諸島で設立するならばケイマン諸島の法律のもとで設立されますし、二番目の場合、運用を判断する運用業者の所在地の国の法律等が適用され、最後については、ファンドの募集や販売が行われる場所、今私たちが念頭に置くのは日本国内で、と思えば日本法が、ということになります。
そうすると、ファンドを作りましょう、運用しましょう、募集しましょう、というだけで、それぞれでターゲットになる場所を検討し決定する必要が出てくる、ということになるのです。

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